日産の内田誠社長が「電気自動車のゲームチェンジャーになる」と期待する新型車だが、競合となる小型車市場は激戦だ。

軽自動車では、販売台数7年連続1位のホンダ「N-BOX」を初めとするスーパーハイトワゴンが主軸だ。売れ筋のグレードの価格帯は100万円台後半が多く、200万円を超えることも珍しくない。居室空間の広さに加えて、登録車に引けを取らない安全性能など機能面の充実ぶりが人気の要因で、価格帯は軽EVと重なる。

軽以外の登録車のコンパクトカー市場では、トヨタ自動車の「ヤリス」やホンダの「フィット」など販売台数で上位に位置する看板車種がひしめく。日産にも2021年度登録車販売台数で4位となった「ノート」がある。いずれもHVモデルがあり、優れた燃費性能を達成している。

こうした競合車種に対して、軽EVではあえて航続距離が短くても勝負になるとの見立てだ。三菱自の調査によると、軽ユーザーの9割が1日の平均航続距離が50キロ未満という結果だった。そこで、軽EVでは昼間に使用し、夜間に充電する利用サイクルを訴求していく方針だ。

2台目需要や僻地利用をターゲットに

三菱自の加藤隆雄社長は「通勤や通学、買い物、送り迎えなど日常使いに十分な航続距離を確保している。(EVが)将来検討する特別な車ではなく、気軽に選んでもらえる選択肢になる」と話し、地方を中心とした2台目需要やガソリンスタンドが近くにない山間部の住民をターゲットにする。

両社は売りきりだけではない販売手法を駆使しながら顧客を獲得したい考えだ。日産の星野副社長は「若いお客様へはサブスクリプション(継続課金)サービスがなじむと思っている」と話す。

日産が「リーフ」、三菱自が「i-MiEV(アイミーブ)」と、両社は10年以上前、他社に先駆けてEVを投入したが、HVや軽自動車の牙城を崩すことはできなかった。

スズキやダイハツ、ホンダといった競合他社の乗用車における軽EV投入は2025年前後と見られ、しばらくは孤軍奮闘の状況になる。潤沢な補助金がいつまで続くかも不透明な中、軽EVの成否は日本市場でEVが普及するかどうかの試金石になる。

著者:横山 隼也