その姿勢は、コロナ禍に際し「真剣に考えないといけないが、深刻には考えないようにしている」と語った章男氏の言葉に通じる。コントロールできないことを深刻に考えるとネガティブになってしまう。まずは「コントロールできる範囲のことを真剣に」やるということだ。

章男氏はこうも言っている。「私たちは多様化した世界で、正解のわからない時代を生きています。こうした時代を生き抜くために大切なことは何か。何かを決めて動いてみることだと思います」と。

ドライバーとして体を張る章男氏

章男氏は、自ら水素エンジン車のハンドルを握り、2021年5月の富士スピードウェイで開かれたS耐(スーパー耐久レース)の24時間レースを皮切りに、同年4回のレースに参戦した。今季もS耐2年目に挑戦している。

章男氏は、水素エンジン開発にまさに「本気」である。体を張る。

「水素というと、爆発のイメージを多くの国民の方が持たれています。参戦ドライバーの1人が私自身です。安全を証明するためにも、私がドライバーとして参加しているんです」 

章男氏は、2021年の水素エンジン車のレース参戦を機に、“仲間づくり”と称し、他産業を巻き込んで、水素の「作る」「運ぶ」「使う」のサプライチェーンの構築に取り組むのだ。

安価な水素の調達は、電気代や原材料などの安い海外で水素を製造し、輸入するのが近道だ。鈴鹿で開催されたレースでは、福島の世界最大級のグリーン水素製造設備「FH2R」(福島水素エネルギー研究フィールド)で作られた国産の水素に加えて、オーストラリアの褐炭を活用して低コストで製造された水素が持ち込まれた。

「いま、私たちに求められているのは、地球環境も含めた人類の幸せにつながる行動を起こすことです」

と、章男氏は自らの考えを述べている。

章男氏は、トヨタが水素関連の開発をするのは、未来の技術開発にリソースを割ける大企業の責任でもあると考える。

「トヨタの水素エンジンは、まだ踏み切れていない企業に“脱炭素の本格化”を告知するという歴史的な役割を果たしていると思います」

と、加藤氏は言う。