新空港線は、2016年に国の交通政策審議会が取りまとめた東京圏の鉄道整備についての答申で「国際競争力の強化に資する鉄道ネットワークのプロジェクト」に位置づけられた。このうち、矢口渡―京急蒲田間については計画の検討が進んでいるとして「事業化に向けて関係地方公共団体・鉄道事業者等において、費用負担のあり方等について合意形成を進めるべき」とされた。

大田区役所の前に立つ新空港線PRののぼり(記者撮影)

同答申に記載された24の鉄道整備プロジェクトには、同区間のように「〜べき」との表現で事業化に向けた具体的な検討を求める路線と、「十分な検討が行われることを期待」などややトーンダウンした記述の2パターンがあり、前者は矢口渡―京急蒲田間を含め都内では6つ、全体でも7つのみだった。審議会からは一定の「お墨付き」を得たといえる。

答申案の発表時、大田区の松原区長は同線が数少ない「〜べき」との表現だったことを受け、「新空港線『蒲蒲線』が高い評価をいただいたことは、大変喜ばしく思っております」とコメントし、早期実現に期待感をにじませた。

費用負担の協議が長引く

しかし、その後は足踏み状態が続いた。課題となったのは、今回合意に至った「都と区の負担割合」だ。松原区長は2017年2月、整備主体となる三セクを2017年度中に設立したいと表明。区は同年度予算で三セクの出資金として1億8000万円を計上したが、年度内の設立は実現しなかった。

過去の経緯を振り返ると、都と区の「温度差」も見え隠れする。都が2016年の答申に向けて前年にまとめた都内の新路線整備に関する検討では、JRの羽田空港アクセス線など5路線を「整備について優先的に検討すべき路線」としたが、新空港線はこの中に入っていなかった。

2019年12月、新空港線推進に向けて区が開いた「鉄道とまちづくりに関する講演会」の様子(記者撮影)

区は2017年度以降、三セク設立に向けた費用を毎年度予算に計上し続けてきた。2019年、区と東急電鉄がまちづくりに関する協定を結んだ際の記者会見で、松原区長は新空港線の進展に関する記者の質問に対し「東京都と費用負担の割合を詰めている真っ最中。話し合いがうまく解決すれば実際に踏み切っていきたいと思っている」と述べ、当時の担当者も取材に対し「今が重要な局面」と語ったが、その後もしばらく目立った動きは見られなかった。

両者が負担割合などについて話し合う「新空港線及び沿線まちづくり等の促進に関する協議の場」が新たに設置され、第1回の会議が開かれたのは2020年9月。計5回の協議を経て今年6月6日、ついに都と区は合意に至った。

合意に至った理由について、区の担当者は「需要予測に基づく負担割合という考え方が整理できたため」と説明する。予測では新空港線の利用者数は1日約5万7000人で、うち羽田空港アクセス関連が3割、空港アクセスを除く区内発着が7割だ。この割合に基づき、都が3割、区が7割を負担することで協議がまとまった。