「アメリカではすでに内戦が始まっている」、ある元アメリカ連邦議会議員は筆者にそう語った。南北戦争のように南部と北部にアメリカが分かれて戦っているわけではないが、近年、アメリカ各地で小規模の政治的暴力事件が多発していることを内戦に例えている。

政治的暴力とは政治に関わる目的を達成するために暴力行為に出ることを指す。今、アメリカでは約半世紀ぶりに政治的暴力の脅威が増大している。議会で行われている2021年1月6日の連邦議会乱入事件を調査する下院特別委員会(以下、下院特別委員会)で改めてその脅威は浮き彫りとなった。 

相次いで起こる不気味な政治的暴力事件

近年、アメリカでは政治絡みの不気味な事件が相次いで起きている。2020年4月には武装集団を含むミシガン州民数百人が同州議会議事堂に押しかけ、パンデミックのロックダウンに抗議。同年10月、連邦捜査局(FBI)はミシガン州のグレッチェン・ウィットマー知事の誘拐未遂事件で容疑者13人を逮捕した。

2020年大統領選後、右翼の白人至上主義者団体などの煽りもあり「選挙泥棒を阻止せよ(Stop the Steal)」のデモ活動が全米各地に広がった。それらは翌年、首都ワシントンで起きた連邦議会乱入事件の前兆でもあった。

直近では6月中旬、アイダホ州にて、LGBTQ(性的マイノリティー)のイベント妨害を計画していた白人至上主義者団体「パトリオットフロント」のメンバー31人が逮捕された。昨今、選挙関係者や反トランプ派の政治家に対する脅迫に関わるニュースが絶えない。

政治的暴力拡大は、FBIの国内テロ捜査件数にも顕著に表れている。クリストファー・レイFBI長官は上院公聴会にて、2020年春時点で国内テロ関連の捜査件数は1000件であったのが、2021年9月には3倍近い2700件まで拡大したと証言。2022年1月、司法省は国内テロ対策部門を新設し、取り締まりを強化している。

政治的暴力はアンティファ(反ファシズム主義者)など左翼でも一部見られるが、現時点で圧倒的に件数が多く法執行機関が注視しているのは右翼だ。