郊外のロードサイドにある飲食店へ向かい、お酒を飲んだ人がマイカーを自分で運転して帰る――。今では信じられないことだが、20〜30年以上前にはこのような光景が普通に見られていた。

誰でも名前を知っている居酒屋チェーンで駐車場付きの店があったぐらいだし、「今は絶対やらないけど、実は昔、飲酒運転をした経験がある」とこっそり話したり、人には言わなくても身に覚えがあったりする中高年以上のドライバーは意外といる。

だが、時代は大きく変わった。飲酒運転をめぐって悲惨な事故が相次いだことを受けて、厳罰化が進み、社会の意識も変わり、飲酒運転の摘発、事故は大きく減った。にもかかわらず、連日のように飲酒運転による事故で人が亡くなったり、大ケガをしたりしたというニュースを目にしていると感じている人は多いだろう。

非常に残念ながら飲酒運転はいまだ根絶されていない。なぜ飲酒運転がダメなのか。現状や関係者の対応は? そしてどうすればなくせるのか。交通コメンテーターの西村直人氏による3回にわたる短期集中連載をお届けします。(編集部)

2021年でも飲酒運転の死亡事故は152件も発生

飲酒運転は悲惨な結末に直結する。1999年11月に東京都で発生した幼児2人の死亡事故、2006年8月に福岡県で発生した幼児3人の死亡事故は、いずれも飲酒運転が原因だったことから大きな社会問題となった。

警察庁によると、2000年の飲酒運転による死亡事故は1276件、同重傷事故は3193件発生していた。それに対し国では2001年に刑法を改正し、飲酒運転時の事故も視野に入れた「危険運転致死傷罪」を新設。翌2002年の改正道路交通法では厳罰化とともに、「酒気帯び運転の罰則適用対象」が見直された。さらに2007年の改正道路交通法では「飲酒運転及び助長行為の厳罰化」も織り込まれた。

これらの対策により、2008年の飲酒運転による死亡事故は305件(2000年比23.9%)、同重傷事故は717件(同22.5%)にまで減少した。が、以降の下げ幅は減少し、2021年においても同死亡事故は152件、同重傷事故は288件発生している。

交通事故統計から見る飲酒運転による交通事故の状況(出所:内閣府)

その後も法律の強化や厳罰化は継続された。2009年の改正道路交通法では「行政処分の強化」がなされ、2014年には「自動車運転死傷処罰法」が施行されている。