安倍元首相が暗殺された7月8日、事件は全米主要ネットワークのトップニュースで取り上げられた。バイデン政権の閣僚に加え、連邦議会議員をはじめ多数の政治家が安倍氏のリーダーシップそして日米関係強化の功績を称え、死を追悼した。特に安倍氏の長期政権に基づく安定感、そして早期から対中政策を念頭に置いて展開した経済外交については、首都ワシントンで高く評価されている。

「回転ドア内閣」終焉で信頼回復

小泉政権の後、日本の首相が1年前後で激しく入れ替わったことから、10年前まで、ワシントンの有識者の間で日本は「回転ドア内閣」とのイメージが固まっていた。

第2次安倍内閣発足から間もない2013年2月、ワシントンのシンクタンクである戦略国際問題研究所(CSIS)で、安倍氏は「日本は戻ってきました(Japan is Back)」と題する演説を行った。同シンクタンクの報告書「日米同盟」(2012年発行)は日本が二級国家となってしまうリスクについて警鐘を鳴らしたものだが、安倍氏はその演説で、日本は二級国家ではなく、これからもそうはならないと訴えた。

当初、安倍氏が発した言葉の信憑性について疑問も投げかけられたものの、後にそのイメージは払拭された。日本国内では「安倍一強」との批判もあったが、憲政史上最長ともなった長期政権を実現したことで、アメリカ政府は安倍氏に信頼を置くことができた。議会関係者は、「当時、日米関係において複数年にわたる政策にもアメリカはコミットできるとの安心感を与えてくれた」と筆者に語った。