ワシントンの有識者の間では、アメリカの対中政策を含む対アジア経済外交では安全保障面だけでなく、包括的な経済的枠組みにアメリカが参加することが不可欠と捉えられている。

2022年5月、アメリカと日本を含む「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」が立ち上がった。しかし、貿易協定で自由化のインセンティブとなる市場アクセスを同枠組みは含まないことからも、効力には懸念が残る。そのため、CPTPPにアメリカはいずれ参加せざるをえないとも見られている。通商政策に詳しいアメリカ議会関係者は、いずれアメリカも参加できるようにCPTPPというアジア太平洋の経済的枠組みを策定したことについて、「消えかかった火を安倍政権が灯し続けてくれた」と表現した。

トランプ大統領とも良好な関係を築く

また、「アメリカ第一主義」を掲げ大幅に保護貿易主義に傾斜するなど、内向き志向が強まったトランプ政権以降も、両国の良好な関係を維持したことについて安倍氏を称賛する声も聞かれる。トランプ政権下、大きな日米貿易摩擦を安倍政権は回避することができた。

もちろん、この間、中国が南沙諸島の人工島建設や習近平国家主席の任期撤廃を実現したことなどで、アメリカは対中警戒感を高め、矛先が日本に向かわなかった側面もある。とはいえ、トランプ前大統領の攻撃的な姿勢によって、アメリカはEU(欧州連合)をはじめ同盟国を含む多数の国と貿易戦争に発展した。しかし、日本は安倍政権の地道な努力によってこうしたことを回避できたとも見られている。

トランプ氏当選後、安倍氏はいちはやくトランプタワーを訪問し金色のゴルフクラブを贈呈し、その後もゴルフ外交などで蜜月関係を構築した。国際会議でもトランプ氏が経験豊富な安倍氏を頼りとするなど、個人的な関係は両国に恩恵をもたらした。だが、両首脳の個人的関係にとどまらず、2020年発効の日米貿易協定などで形に残したことで、良好な関係は後の政権にも受け継がれていることも評価されている。