ウクライナの悲惨な戦争の惨状が連日世界に報じられる一方で、西側によるロシアへの経済制裁は、西側にもダメージを与え、消耗戦の様相を呈している。ロシアが軍事・経済用の輸入品確保に苦労する一方、西側諸国はロシア産エネルギーからの代替で苦戦し、エネルギー価格の上昇という大きな代価を払うことを強いられている。

アメリカのウォールストリート・ジャーナル(WSJ)は、「英誌エコノミストの調査部門『エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)』の最近のリポートによると、ロシア・ウクライナ戦争は2022年の世界GDP(国内総生産)を約1兆ドル(約138兆円)押し下げる見通しだ。EIUは世界経済の成長率見通しを2.8%とし、開戦前の予想(3.9%)から引き下げた。イタリア、ドイツ、フランスの落ち込みが特に大きいとみられるという」と伝えている。

経済活動に最も大きな影響を与える1つはエネルギー価格だ。アメリカのバイデン大統領は最近訪問したサウジアラビアで石油増産を迫ったが、確約は得られなかった。サウジは対ロシア制裁に加わっていない。

ロシア産原油への価格上限設定を画策するアメリカ

一方、最近インド太平洋地域を歴訪したアメリカのイエレン財務長官は、アメリカが推進するロシア産原油の価格に上限を設定する構想で前向きな感触を得たと報じられた。

ただ、イエレン氏は6月、ロシア産原油がロシアの戦力を下支えすることはあってはならないとしながらも、「われわれがやりたいのは、国際価格を抑え、世界的なリセッションや原油高につながる急騰を防ぐために、ロシア産原油を市場に流入させ続けることだと思う」と述べ、ヨーロッパのようにロシア産石油や天然ガス依存から完全に脱却する考えとは距離を置いている。

理由はロシア産石油や天然ガスの最大顧客であるヨーロッパをロシアが失えば、中国が買いたたいてロシアから石油や天然ガスを輸入し、中国を利するリスクも念頭にあるからだ。ただ、すでに中国はロシア産エネルギー輸入を増やしており、対ロシア経済制裁効果を弱めている。