次なる焦点は、世界経済において技術をめぐる競争と分断が進んだことだ。

次世代の産業の鍵は、人間の活動のデータ集積、大規模高速通信、人工知能(AI)によってデジタル世界と物理的世界を融合させ、生産・労働・サービス・生活の概念を変革することにあると言われる。

問題は、この変革のプラットフォームとなる技術が世界で分裂する方向へと向かっていることだ。特にアメリカと中国は、演算と大規模データ処理をめぐるハードウェア、ITインフラ、電子取引等のサービス、さらに新興技術開発で熾烈な競争を展開している。これらの技術基盤こそが、生命科学、無人化技術、次世代兵器開発等に大きな影響を及ぼす。

さらに重要な問題は、こうした機微技術の占有やサプライチェーンによる依存関係を「相互依存の武器化」(ファレル/ニューマン)として強制外交に利用する局面が増えたことだ。2010年の尖閣諸島沖漁船衝突事件後のレアアース輸出規制、オーストラリア産ワインに対する反ダンピング措置など記憶に新しい。

中国の習近平国家主席が2020年4月の共産党財経委員会の講和で「グローバルサプライチェーンの中国依存強化を通じた『外国に対する反撃・抑止力の形成』を志向する」と述べたことは「相互依存の武器化」の典型例である。中国との相互依存が非対称であるほど、すなわち中国に一方的に依存する割合が大きいほど、中国からの強制外交を受けやすくなる。

こうして国際経済秩序における国家資本主義の台頭、技術をめぐる競争と分断、相互依存の武器化、という現象が、地経学のマクロトレンドとして正面から向き合うべき課題となったのである。

アメリカの経済安全保障政策の展開

このような地経学マクロトレンド変化に、最も早く包括的に取り組んだのがアメリカ政府だった。アメリカのトランプ政権は「国家安全保障戦略」(2017)で「経済安全保障は国家安全保障である」(economic security is national security)と位置付け、公平性・互恵性・規則の忠実な順守に根差す経済関係を歓迎するが、違反行為・欺瞞行為・経済的侵略からは目を逸らさないという方針を示した。