筆者は前述のとおり、今回の物価高の主な原因はエネルギーや食料品の価格上昇であり、円安による影響は次点であることや、そもそも為替水準を操作するために金融政策を変更するべきではないという立場を一貫して取り続けている。

仮に円安を止めるべく金利を大幅に引き上げれば、家計のローン返済負担や企業の借り入れコストが上昇し、経済全体に大きな悪影響を与えよう。

また、メディアではことさらに「円安悪玉論」が喧伝されている節があるが、物事にはメリットとデメリットがあり、円安によるメリットについても考慮する必要があると考えている(参考:『これだけは押さえたい「急激な円安」が進んでる訳』)。

はたしてわが国の中央銀行である日本銀行の黒田総裁はどのような考えを持っているのだろうか。

黒田総裁の発言を見てみる

最後に7月21日に金融政策決定会合のあとに会見をした黒田総裁の発言内容を共有して終わりにしたいと思う。一部を抜粋しての共有になるが、これまでの文章を頭に入れたうえで読んでみると、受け止め方に変化が生じるかもしれない。

・金利を上げれば企業の設備投資、その他に大きな影響が出てきます。従って、金融政策として為替をターゲットにしてやることはないということです。なお、輸入物価の上昇については、確かに円安の影響も出ていますが、国際商品市況の上昇の影響の方が大きいわけです。国際商品市況の場合は、交易条件の悪化を通じて、必ず日本経済にマイナスになるわけです。一方、円安の場合は、輸入物価の上昇に影響するだけでなく、輸出物価にも影響しますので、交易条件は必ずしも悪化しないという違いがあることはご理解頂きたいと思います。

・確かに円の対ドル下落のきっかけというか、マーケットの考え方には、日米金利格差があったと思いますが、実際のところ、世界的にドルの独歩高で、皆、為替が安くなっています。例えば、隣の韓国は相当金利を引き上げていますが、ものすごい勢いでウォン安になっていますので、金利をちょっと上げたらそれだけで円安が止まるとか、そういったことは到底考えられません。本当に金利だけで円安を止めようという話であれば、大幅な金利引き上げになって、経済に大きなダメージになると思います。

(出所):日本銀行「総裁記者会見要旨」

著者:森永 康平