経済的な「デカップリング」が困難である中で、対立する関係にある国家がどのような関係を作っていくのか。地政学だけでは読み解けない時代を「地経学」という観点で読み解きます。

経済安全保障が埋め込まれた国家安全保障戦略へ

現在、岸田文雄政権下で、国家安全保障戦略の改定のための作業が行われている。日本で最初に国家安全保障戦略が策定されたのが、2013年12月の安倍晋三政権下でのことであり、その際に岸田氏は外相として策定作業にも携わっていた。

この国家安全保障戦略では、「おおむね10年程度の期間を念頭に置いたもの」と書かれており、すでに9年が経過する一方で、この間にあまりにも巨大な国際情勢の変化が見られた。現在進行中の、ロシアによるウクライナ侵攻はその1つである。

今年の1月から専門家からの意見聴取を始め、本格的な策定作業に入った。ただし、前回とは異なり今回は有識者会議方式をとらず、あくまでも国家安全保障局を中心として、防衛省と外務省の官僚を中心に起草作業を行っている様子である。おそらくは夏から秋にかけて、本格的に政府内で文書が作成されていくのだろう。

ここで1つの焦点となっているのが、この文書の中で経済安全保障がどのように位置づけられるかである。前回の2013年の文書の中には、この言葉は含まれていなかった。近年の米中対立と、それに伴うデカップリング、さらには中国による経済関係を用いて相手国に圧力をかける手法などが、深刻な懸念となっている。

岸田政権でこのように新しい国家安全保障戦略策定に向けた準備作業が本格化し、さらにはその過程で「経済安全保障」が注目されている。これが、2013年との最も大きな違いであろう。

戦後外交におけるエコノミックステイトクラフト

経済安全保障、あるいは地経学についての日本政府の取り組みは、必ずしも岸田政権になって始まったというわけではない。戦後日本は平和国家としての歩みをスタートして、また憲法9条で「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」とうたっている。