電光石火の人事断行決断の裏には、故安倍氏の「国葬」決定への批判の高まりと、それに絡む旧統一教会の問題だけでなく、円安などによる物価高騰やコロナ第7波の感染爆発への岸田首相の強い危機感があった。

最新の世論調査でも、コロナへの不安や国葬への反発などから、内閣支持率が政権発足後最低となるケースが相次いでいる。このため、岸田首相周辺にも「このまま何もしなければ、政権は大ピンチとなる」(官邸筋)との不安が広がっていた。

それも踏まえ、参院選大勝で手中にした「岸田1強」態勢を踏み台に、「すべては自分が決めるという、『決断と実行のニュー岸田』に大変身することで、今後の政権運営の主導権確保を狙う」(側近)という大勝負に打って出たのが実態とされる。

5日の決断を受け、岸田首相は広島市での6日の記者会見で人事断行について、物価高や防衛力強化、安倍氏「国葬」などを列挙。「さまざまな課題を考えると、新しい体制を早くスタートさせたい」と国難突破のための新体制づくりであることを力説した。

旧統一教会との関わりを明確にするという“踏み絵”

併せて岸田首相は、自民党との深いつながりが指摘されている旧統一教会(世界平和統一家庭連合)について「私個人は当該団体とは関係ない」と明言。「私の内閣では、新たに指名する閣僚だけでなく、現閣僚、副大臣も含めて当該団体との関係をしっかり点検し、結果を明らかにしてもらう。そのうえで適正な形に見直すことを指示したい」と語った。

これは、新人事の対象となる人物には、自らと旧統一教会との関わりを自ら明確にするとの“踏み絵”とする狙いがにじむ。岸田首相周辺からは「すべては自己責任とし、うその申告が発覚すれば即刻罷免され、その後は人事の対象外にする厳しい対応」との声が出る。

こうした経緯を踏まえ、岸田首相は8日夕刻の党臨時役員会・総務会で9月末に任期満了となる党役員人事の総裁(首相)一任を取り付け、山口公明党代表との与党党首会談を経ての人事工作に着手。長崎原爆忌出席後の9日中に新体制人事を固め、10日夕刻までに第2次岸田改造内閣を発足させる方針だ。

すでに党内ではさまざまな人事情報が飛び交っているが、岸田首相の基本方針は①党・内閣の骨格維持、②旧統一教会との深いつながりのある人物の排除③順送り人事より女性や若手の積極的登用、などとみられている。

その結果、党・内閣の要となる麻生副総裁、茂木敏充幹事長、松野博一官房長官、鈴木俊一財務相、林芳正外相は留任させる方向だ。また山口公明党代表の要求も踏まえ、斉藤鉄夫国土交通相の留任を受け入れる方針だ。