Amazonに限らずIT企業が主眼とするのは、こうした形で家の中のDX化の中心となるデバイスのトップシェア企業になることです。そのためには高性能で安価で便利なAIとカメラ搭載型のロボットの開発競争で他社よりも先を進むことを狙うのです。

さて、世界中の大手IT企業がこのような便利なものを発売し、わたしたちの家庭は今よりもさらにずっと便利で安全な場所へと生まれ変わるでしょう。ただし知っておくべきことがひとつあります。

家の中がDX化されていけば、そのDXを担当する企業にはその家のさまざまな家電や家具の数や配置や製品番号が把握できます。それを知っていいかどうか、私たちが「承認する」ボタンを押したらその情報の利用を承認したことになるのかどうかは将来の法律上の問題になります。しかしたとえ承認された情報が限定的だとしてもAIには生活水準もその家に足りないものが何なのかも高い確率で推定できます。

たとえばビジネス領域としてAmazonはメディカル事業に参入していますが、論理的には家庭内のDXを押さえていることで、その家庭の誰かがGoogleで健康状態について検索したり、フェイスブックで家族の介護について不満を書き込んだりするよりもずっと前に、その家庭がどのような医療上のニーズを抱えているのかAI分析できる立場になるかもしれません。

ルールを含めて未来を先取りして設計

これらはみな、高度に先端的な法律問題であって、将来の時点で何が許されるのか、何が許されないのかがまだ確定していない領域ではありますが、GAFAはそういったルールも含めて未来を先取りして設計し、そのことによってより世界の支配力を高めていこうと動くタイプの覇権企業なのです。

家にあるテレビの製造年が古いとか、エアコンがもう壊れかけていてカタログ性能ほど部屋が涼しくはないとか、トイレには洗浄便座がとりつけられていないとかの情報は直接の売り上げ増に直結するかもしれません。

法律で直接情報が使えなくても家の広さや住んでいる人数と購入履歴を組み合わせることで家庭内ニーズはより正確に推察できるでしょう。どの商品やサービスを売り込めばいいかも判定できます。ひょっとすると新しいタワーマンションや余裕資金を活用した投資商品まで扱いのない商品でも広告事業としてその家庭に売り込める機会をちゃんと予測してくれるかもしれません。

そのようなIT企業の動きから私たちをどう守るかは政府に期待しましょう。私たちが知っておくべきことは、今、世界ではそのようなことを巡って巨大IT企業同士とそして先進国各国の政府がさまざまな形で、つばぜり合いを繰り広げているという事実です。

著者:鈴木 貴博