2022年6月1日に行われた韓国の統一地方選挙では、尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権が樹立したばかりの保守系与党「国民の力」がその勢いのまま主要17の市・道(県に相当)の首長選のうち半数を超える12の選挙で勝利した。そんな保守派の圧勝ムードのなか、ソウル市麻浦(マポ)区で韓国政治史に新しい1ページが開かれたのをご存じだろうか。同区議会議員に「共に民主党」の候補者である車海栄(チャ・へヨン)氏が当選、韓国で初めてセクシャル・マイノリティ(LGBTQ)の議員が誕生したのだ。政治家としてチャ・へヨン氏は何を考えているのか。ソウル在住の台湾人ジャーナリスト楊虔豪氏が当選後に独占インタビューを行った。

市民活動家から政治家へ

チャ・へヨン氏は1986年生まれだ。ソウル市の聖公会大学校・新聞放送学科卒業後、フェミニズム運動やクィア・パレードに参加するなど市民運動に関わるようになった。その後、あらゆる領域において誰もが差別されない社会を目指すコミュニティ「life friendly lab、yuuum」を創設。さまざまな理由で1人になった市民が抱える問題を掘り起こし、サポートしてきた。交流会の実施やカウンセリング、教育だけでなく、支援政策の立案にまで関わっている。そして選挙前、チャ・へヨン氏はパートナーの女性がいることをカミングアウトした。

「自分の性を男性だと思っていた頃、男性を好きになったことも、女性を好きになったこともありました。とはいえ、私自身をバイセクシャルと呼ぶには違和感があったのです。では私が男性ならば、男性に恋愛感情を抱けばゲイということなのか。私はどんなセクシュアリティとして彼を、彼女を好きになったのだろうか、と」。これは7年前にチャ氏が韓国のゲイ男性の権利団体「チングサイ(chingusai:韓国語で友人同士の意)」のインタビューで述べた言葉だ。

チャ氏は自分のセクシュアリティをどう定義するか、長年悩んできた。当初は自身をレズビアンやバイセクシャルと表現することが、対外的に最も便利だと思っていたという。しかし実際に社会に出て活動し、世の中により多くのセクシュアリティが存在することを知ってからは、自身のセクシュアリティにこだわることはなくなったそうだ。

地元で市民活動家として知られるようになったチャ氏は、次第に現実の壁を目の当たりにする。「市民活動として行政へ働きかけても、予算や条例の問題がありなかなか進まない。私はこれらに正面から取り組むために区議会議員選挙への出馬を決めたのです。議員としてできることがないか試したかった」。