彼女は経営者として、泥臭い苦労をたくさんしています。寝る時間を犠牲にして働いたり、出演機会を狙ってQVCの本社近くに控えていたり、怖い起業家仲間にいじめられたり。自分を格好よく飾らないところに共感性があると感じます。

それを、リベラル、多様性、LGBT、ルッキズム……という大きなテーマとして話すのではなく、あくまで自分の身の周りの話、個人の話としてリアルに描いているところに、その共感性の高さが起因しているのだと思います。

スターから、身近な幸せの維持へ

音楽の世界もそうですが、ミック・ジャガーなりマドンナなり、かつてのポップスターは、別世界の神様のように見られていて、どんな私生活を送っているのか一般の人にはよくわかりませんでした。

しかし、今のポップスターは、例えば、ビリー・アイリッシュのように、SNSで悩みや暗い感情も見せる等身大の存在で、それが受け入れられているのです。

インスタグラムも、少し前まではキラキラした「インスタ映え」が流行りましたよね。最近では、それは盛りすぎだねと言われます。もっと素直な日常や、暗い内面を出してもいいという雰囲気になってきました。

振り返ると、強烈なロールモデルがいて、みんながそれを目指して一丸となって進むという文化は、2000年代のものでした。

一発逆転より、大事な価値を守る

その背景には、就職氷河期世代の存在があります。非正規雇用になったり、ブラック企業で働くことになったりした当時の若者たちには、この世界で生き延びるためには、ホリエモンや勝間和代さんのような成功者を目指して一発逆転するしかない、という感覚があったのだと思います。

ところが、2011年の東日本大震災で一気にマインドが変わりました。津波や地震でいつ死ぬかわからないのだし、一発逆転で儲けることを狙うより、もっと身近で、いい人たちに囲まれて、小さくとも大事な価値を育てていくほうがいいという感覚になったのです。ミレニアム世代や、Z世代の感覚がそれに近いでしょう。