さて、冒頭の「BA.5ワクチン」の話だ。アメリカでは9月接種開始見込みだというのに、日本では10月中旬以降まで待ってもBA.1ワクチンしか打てないのか。

ファイザーやモデルナの今後の動きはわからない。ただ、これまでの新型コロナワクチン導入の経過でいくと、アメリカや欧州当局への薬事承認(緊急使用含む)申請後に、日本国内でも申請を行っている。

懸念はやはり、申請ハードルと承認までの長さだ。

現行の新型コロナワクチンは、海外当局により使用を認められていることを前提とする「特例承認」を適用し、審査期間の大幅な短縮が行われた。

例えばファイザーの新型コロナワクチン(従来ワクチン)は、2020年12月2日に世界で初めてイギリス当局が使用を認め、同18日に日本国内で承認申請、2月14日に承認となった。この間、58日。同17日には国内で接種開始となった。

BA.1ワクチン(2価)も、ファイザーとモデルナは共に8月初旬に承認申請を行っており、10月中旬以降の接種開始なら、同じく約2カ月での承認を想定している計算だ。

これまで薬事承認には、申請から通常1年、早くても9カ月を要していたことを思えば、2カ月は異例のスピードだ。

だが、もっと具体的に考えてみると、その2カ月さえ惜しいことがわかる。もし9月に両社がBA.5ワクチンを国内申請したとして、承認は11月以降。実際に接種の順番が回ってくるのは、12月や年明け以降の人が大半だ。

そのとき、BA.5はまだ流行しているだろうか?

特例承認でも2カ月、新設「緊急承認」制度は?

もちろん秋に追加接種を受けられるなら、意味はある。冬に来ると予想される流行の第8波に備えるためだ。たとえ従来ワクチンであっても、先のとおり、追加接種から少なくとも3カ月近くは重症化予防効果が高く維持される。

だが、その点で言えば、別段BA.5ワクチンである必要性はないかもしれない。日々、別の変異種が現れるため、冬の流行では主役の座をBA.5にとって代わるに違いないからだ。

そう考えたとき、ファイザーやモデルナは、BA.5ワクチン(2価)を日本国内で承認申請するだろうか?

スピーディーに製造承認をする制度には「特例承認」と「緊急承認」の2つがある。

「特例承認」制度を利用する場合、国内の治験そのものが免除されるわけではない。いま使っているコロナワクチンも、ファイザーは2020年12月に海外での大規模治験のデータを添えて承認申請した後、年明け1月に国内の治験データも提出している。モデルナも同様だ。