アメリカのインフレが依然、日本を含む世界の金融市場を揺らしている。インフレ率上昇が顕著になり始めた昨年夏の段階で、Fed(アメリカの連銀)は「インフレは一時的」と判断して金融引き締めに距離を置いていたが、そうした希望的観測は打ち砕かれ、今や2022年末の政策金利は3.5〜4.0%に達するとの見方が支配的になっている。

「4つのインフレ要因」のうち落ち着いてきたのは?

インフレが収まりさえすれば、金融引き締めは終わり、経済に対する逆風は和らぎ、金融市場では長期金利の安定と株価上昇が期待される。だが、残念ながら現在のインフレを取り巻く環境は厄介と言わざるをえない。

現在のアメリカにおけるインフレは「エネルギー」「サプライチェーン」「家賃」「賃金」という4つの要因に分けられる。まずエネルギーについては世界の指標であるWTI原油先物価格が7月にピークアウト、ガソリン価格も明確に低下するなど、終息の兆しが強まっている。

同国の7月のCPI(消費者物価指数)に基づけば、エネルギーは前年比プラス32.9%と大幅に上昇した状態にあるものの、前月比の伸びはマイナス4.6%と大幅に低下しておりピークアウト感が認められている。また8月入り後もWTI原油先物が1バレル=100ドル以下の領域で推移していることを踏まえれば、CPIベースのエネルギーは8月分も減速が予想され、当面はインフレの下押し要因となる見込みだ。

次に「サプライチェーン」に目を向けると、多くの企業の業況調査で正常化方向の動きが確認されている。ISM製造業・非製造業景況指数のほか、各地区連銀が集計するほぼすべての調査でサプライヤー納期の短縮化が報告されており、これら指標の多くは新型コロナウイルスのパンデミック(大流行)前と同程度の水準へと低下している。

その他では、中国から北米向けのコンテナ船賃料が明確に下落するといった動きもある。そうした中で、サプライチェーン問題を象徴していた自動車生産は7月鉱工業生産に基づくとパンデミック発生前の水準を回復した。アメリカのインフレ率押し上げに大きく寄与していた中古車については、新車供給の回復を受けて下落が期待される。「エネルギー」と「サプライチェーン」については沈静化の方向にあると言え、この点は間違いなく朗報である。