ウクライナ側によると、2022年10月にはアメリカ国防総省内に武器供与と輸送に関する本部が設置される予定という。これまでは航空機で武器を運んでいたが、大幅に輸送量が増えるため、船舶輸送が主力になるという。

これに伴ってアメリカ製の高性能兵器の供与が大幅に増える見通しだ。F16 などアメリカ製戦闘機の供与が初めて始まる可能性もあるという。すでにアメリカではウクライナ兵士約1万人がアメリカ製兵器の操作の訓練を受けており、ウクライナ軍の装備面でのNATO(北大西洋条約機構)化が事実上進むことになる。

こうしたアメリカのウクライナ防衛への本格的関与の姿勢は、ウクライナが一定の戦勝を果たすことで、プーチン政権に継戦を断念させるとの米欧の戦略に基づくものだ。同軍事筋によると、仮にロシアとの間で何らかの停戦協定が実現した後、ロシアが協定を破り攻撃してきても守る態勢構築を意図しているという。

援助疲れを感じないアメリカの支援

ウクライナ独立記念日の2022年8月24日、アメリカ政府は30億ドル(約4100億円)規模の追加軍事支援を発表した。侵攻後、アメリカが1回の発表で明らかにした軍事支援としては最大規模だ。この中にはウクライナが強く望んでいた防空システムが初めて盛り込まれた。

この援助発表の際、アメリカ国防総省のカール国防次官(政策担当)は「プーチンの戦略は、ウクライナ国民やウクライナの同盟国が諦めるのを粘り強く待つことだ。今回の援助はこのプーチンの理論に直接挑むものだ」と強調した。当面アメリカ政府に「支援疲れ」がありそうもないことを示す発言だ。

同じことが、実は軍事支援に消極的と言われてきたドイツにも当てはまる。支援計画を発表しながら、なかなか実行しないショルツ首相に対してウクライナに同情的な国民ばかりか、連立政権内からも批判が出ていた。しかし2022年7月頃から本格的支援が動き出した。ドイツを当初批判していたウクライナ政府関係者からも批判が出なくなった。

フランスは相変わらず消極的だが、英国は軍事支援については米欧全体をリードするほどの積極姿勢だ。チェコなどの東欧諸国も支援に積極的だ。

これに対し、ロシア軍は反攻作戦を軍事的に撃退するとの強気の姿勢だ。しかし、苦しい実情を端的に示す事態が2022年8月24日に起きた。この日は侵攻開始からちょうど半年で、同時にウクライナの旧ソ連からの独立記念日という二重の意味で節目となった。

ゼレンスキー政権は政治的打撃を狙ってロシア軍が首都キーウの政府庁舎などに大規模なミサイル攻撃を行うのでは、と厳戒態勢を敷いた。

しかしこの日、ロシア軍が弾道ミサイル「イスカンデル」で攻撃したのは東部ドニエプロペトロフスク州の駅だった。25人もの死者が出たが、拍子抜けの印象は否めなかった。現地の事情に詳しい軍事筋は筆者に対し「精密誘導ミサイルの不足が理由だろう。東部への攻撃に回すためキーウにミサイルを撃たなかった」と指摘した。