「一帯一路」により、これまでとは異なる覇権を形成しようとしているように思われる中国。ウクライナ侵攻によって世界から孤立しつつあるように見えるロシア。この2つの国家が手を結んだ際、世界覇権のゆくえはどうなるのか。
手数料と物流という枠組みから世界史を捉えなおし、覇権国家の成立条件について論じた『手数料と物流の経済全史』を上梓した経済史研究者の玉木俊明氏が解き明かす。

覇権とは何か

「覇権」という言葉は、あまりに安易に使用されているように思えてならない。むろん、この語に明確な定義を付与することは難しいが、かといって単に「政治的、軍事的ないし経済的に圧倒的な優位がある国」とするだけでは、学問的分析のためには不十分だというそしりを免れまい。私は、そういった考えを長年にわたり抱き続けてきた。

拙著『手数料と物流の経済全史』は、私の頭のなかにこびりついていた考えを濾過し、「覇権」をより一般的なものとして定式化し、歴史的観点を与えるために書かれた書物である。

読者の皆さんもご存じのように、長年にわたり、経済力とは工業力を意味すると考えられてきた。たくさんの工業製品を製造する国こそが覇権国家であるという前提があった。

しかし、GDPに占める工業の比率が低下し、金融部門の比率が上昇し、さらにGAFAMのように無形資産が非常に巨額な企業が登場すると、プラットフォームこそが経済的覇権の主要因だと考えられるようになった。

それは、世界的な経済構造の変革だといわれることも多いが、果たして本当にそうなのだろうか。