「不都合な真実を言わないということがあってはならない」――。

静岡県の川勝平太知事が「不都合な真実」というフレーズを連発した。9月7日に行われた知事への囲み取材での出来事だ。

不都合な真実とは、小林一哉氏による2020年9月11日付記事「リニア提訴を前に露呈、静岡県の不都合な真実」にあるとおり、静岡県側が触れたがらない事実を指したものだが、この日は川勝知事のほうから静岡県以外の関係者が触れたがらない事例として、自ら「不都合な真実」と表現した。

この日、川勝知事は神奈川県相模原市を訪れ、JR東海が建設を進めるリニア中央新幹線・大洞非常口と神奈川県駅を視察した。知事の持論は神奈川県と甲府市を結ぶルートの先行開業である。JR東海の担当者から直接「工事が順調に進んでいる」という話を聞くことで、先行開業を迫るという狙いがあったと思われる。しかし、川勝知事の表情は固かった。現状が予想と違っていたのだ。

車両基地「完成は2034年じゃないか」

大洞非常口から神奈川県駅に向かう道中で、川勝知事は「ルート近くに作られる関東車両基地の予定地も見てみたい」と言い出した。品川―名古屋間に車両基地は2カ所設けられる。知事は岐阜県中津川市にある中部車両基地を今年6月1日に訪れている。その意味で関東基地を見たいというのは当然である。

同行する事務局の担当者は「説明できる人がいない」と躊躇したが、川勝知事は「現場を見るだけでいい」と主張。現場に到着すると、川勝知事は驚いた。「JR東海管理地と書かれた看板がところどころにあったものの、多くの人家があった」。土地買収が終わっていない。しかも、事務局に確認すると造成から完成まで11年かかるという。関東車両基地がなければ神奈川県と甲府市を結ぶルートの先行開業はできない。川勝氏が憤った。「ちゃんとやっていらっしゃると思っていたのに、土地買収がすぐ終わって来年に工事着手しても完成は2034年じゃないか」。

川勝知事は、視察後に相模原市の本村賢太郎市長と面談した際、この話を持ち出した。本村市長は「土地買収は市ではなく県の仕事だ」と話したという。