電通本社ビル(撮影:今井康一)

「働き方改革」という言葉も一般的になり、大小かかわらず多くの企業で残業時間の削減が進められている。では、長期間で見て残業時間削減が進んだ企業はどこなのか?

今回は『CSR企業総覧(雇用・人材活用編)』2022年版(時点は2020年度)と『CSR企業総覧』2012年版(同2010年度)に掲載している月間残業時間を比較。減少幅が大きい会社を上位100社までランキングした。

比較は掲載する証券コード等が同じであれば同じ会社として計算。最近持ち株会社に変更した場合でも、同じコードであれば単純に比較しているので注意していただきたい。

電通の残業は月間37.5時間減

ランキング1位は電通グループで50時間から12.5時間(いずれも所定外時間)に37.5時間減らした。減少率は75%だ。10年前は電通として掲載していた。同社は2015年末の過労自殺問題で揺れ、働き方改革の象徴的な会社でもある。

その後、残業時間削減を目指し多くの取り組みを行ってきた。総労働時間の可視化を目指し、タイムマネジメントダッシュボード、最適時間カレンダー等のシステム導入を進める。過重労働者の面談や勤務間インターバル制度なども取り入れ、成果を出している。

2位は金属加工機械で世界首位級のアマダで32.4時間減らした。直近の残業時間は1.4時間で10年間の減少率は95.9%と残業をほぼなくしている。

RPAにより定型業務で工数を削減。時間外や休日対応はコールセンターでの受け付けのみにすると顧客等にアナウンスも行い、残業せずに帰宅できるよう環境を整備。さらに、定時退社日や消灯時間を設定することで、必要外の残業はなくしてきた。

3位はマツキヨココカラ&カンパニーで25.6時間の削減。いずれも旧マツモトキヨシホールディングスのデータになっている。業務の繁閑を柔軟に対応することを目的として1カ月単位の変形労働時間制度を導入するなどで残業時間を削減してきた。

4位はクラウド型販売支援ソフトの開発・販売を行うWOW WORLD(24.6時間削減、以下同)。社内での積極的な啓蒙活動が功を奏した形だ。

以下、5位横浜魚類(24.5時間)、6位伊藤忠商事(23.7時間)、7位バンダイナムコホールディングス(22.1時間)、8位日鉄ソリューションズ(21.6時間)と続く。

ランキング対象455社のうち10年間で残業時間が減った会社は280社。逆に増加は169社だった(ほかに増減ゼロが6社)。残業時間を平均値で見ると2010年度17.6時間(665社)に対して2020年度15.5時間(921社)と10年間で2.1時間減少している。

一般的にESG評価では残業を減らすことは正しいとされている。ただ、業績好調時には業務等が増えていくこともある。「若いうちは多少残業しても仕事を覚えたほうがいい」という意見も根強くある。健康を害するような過重な残業はもってのほかだが、一定の残業は必要な場合もありそうだ。「必ずしもゼロにするのがいい」とは言えない、基準設定が難しい評価項目の1つである。