秋の紅葉シーズンに向け、これから再び登山者、ハイカーが増える時季だが、そこにも落とし穴がある。紅葉目的の低山・里山は、有名な高山と違い登山道の整備状況が十分でなかったり、作業道などが入り組んでいることから、「道迷い」による遭難が増える傾向にある。また、秋は日没が早く、朝晩の気温急低下や、稜線では雨が雪になることもあり、夏山よりもリスク管理がより強く求められる環境となる。

秋の紅葉(筆者撮影)

今年の夏山遭難多発の反省を踏まえ、秋山にどう臨んだらいいのか。遭難や救助要請といった事態を招かないためにはどんな準備、心がけが必要なのか。前出の岸本氏が説く5カ条は次の通りだ。

①自身の体力や技量にあった山選び

「夏は疲労(バテ)による行動不能遭難が多発しました。そうした遭難者の多くはコースタイムの2〜3倍もかかって行動しており、行動時間が長時間にわたることから途中でバテてしまい山小屋にたどり着けないケースが多い。

背景には基礎体力不足、事前の準備不足、実力に見合っていないルート選びなどの実態があります。秋は、朝晩が冷え込むうえ、日没が早くなり、これまで以上に時間的にも体力的にも厳しい環境下になりますので、自身に見合った山選びをしてもらいたいですね。特に高年齢層の登山者で、登山経験の浅い人や、経験が多くても久しぶりに再開した人、自身の体力を過信している人などは要注意です」

②天候確認の徹底

「秋山は標高の高いところでは降雪があり、気温も下がります。低体温症のリスクが高くなることから、山の天気予報を確実に確認し、『寒冷前線の通過』『上空に寒気がある』『台風が近づいている』等のキーワードがある場合は中止か延期してください」

③緊急時の備え

「遭難として通報を受けてもすぐに救助できない場合が多々あり、その場合はビバーク(緊急幕営)することになります。この時、体温の低下を防ぐエマージェンシーシートや防寒具、通信機器(携帯電話)の予備バッテリー、食料等が必要になりますから、日帰りであっても緊急時に備えた装備を準備してください。また、日没が早くなり、ヘッドライトがなくて行動できないという遭難も多く発生するので、必ずヘッドライトを携行してください」

④山小屋の営業等の事前確認

「秋山シーズンになると、早いところでは9月下旬には山小屋の営業を終了します。計画の段階でトイレや水場等も含めて確実に事前確認をしてください」

⑤家族や友人との登山計画の共有・提出

「登山に行った家族と連絡が取れないという安否確認の問い合わせが警察署等に多くあります。確認や調査をすると、家族らが計画の詳細を知らされていないために勘違いしているケースや、登山中に中途半端な連絡をしたままその後の連絡を怠り、家族が心配のあまり通報するといったケースの方が、実際に遭難したケースよりも多いのが実態です。

通報を受けてからの確認や調査には警察だけでなく山小屋など、多くの関係者を巻き込み、結果として『ただの勘違い』は、関係者の業務負担になるだけです。登山計画の共有と提出は登山者の最低限のマナーとして心がけてください」

心の充足感を満たすうえで、山歩き、登山は最高のアクティビティである。ましてやこれからの時季は大気が澄み渡り、山が色づき、下山後には癒やしの温泉もある。そんな快適な山歩きの大前提になるのが安全最優先である。山岳のプロである岸本氏のアドバイスを肝に銘じ、入念な事前準備と万全な体調管理の下で山に向かっていただきたい。

なお、秋山の最新情報や山岳遭難に関する情報などは長野県警察の山岳情報サイトに詳しく記載されているので参考にされたい。秋晴れの一日、最高の山歩きを堪能したいものである。

著者:山田 稔