「それはね、市場が伸びていて、あちこちから製品の引き合いが来ている状況なら、もうお客さんは必要性を理解してるわけで、後は製品の機能を説明するだけだから、こっちも詳しくないといけないって話。だけど、俺たちは、まだ明確なニーズがない顧客に対してこの新製品を売ろうとしている。

そういうユーザーには製品の細かい話なんてどうでもいいんだよ。その前に、なぜその製品を導入する必要があるのかを、きちんと体系立てて説明できることが重要なんだ。だけど、意外にそれをみんなやろうとしない。だから、なかなか新製品が売れていない。もちろん、製品知識はあるにこしたことはないけど、知識がないと売れない、というのは間違っているよ」

この話を聞いても、受注経験がなかった私はまだ半信半疑でしたが、「ニーズがないなかで売るためにどうすれば良いのか」をもっと研究してみようと思いました。

それから私はトップ営業だった先輩の営業手法を徹底的にマネすることにしました。あらゆる営業本・心理学の本を読み漁り、トップ営業の方のセミナーにもたくさん参加してきました。

どうすればニーズがまだない顧客に対してうまく必要性を訴求して受注につなげられるのか、トップ営業の方々のマインドや手法を取り入れつつ、自分なりにアレンジを加え試行錯誤を繰り返していったのです。

初受注、2件目、3件目と受注が増えていくうちに、少しずつもやもやとしていたものが確信へと変わっていきました。そして「仮説提案力」こそが、必要性訴求のカギになるということに気づき、私独自の「仮説提案営業」のメソッドをあみ出したのです。

仮説提案で若手社員に成功体験を積ませる

昨年、あるIT企業に営業研修をした際に、配属されてからまだ日が浅い新人営業の方と、個別面談をすることがありました。彼はとても真面目で一所懸命な性格で、「攻めの営業」で新規顧客開拓に取り組むチームメンバーの中で、自分がまだ売上を作れていないことに焦りと不安を感じていました。

そして、「自分は製品知識がないので、売れてないんです。だから週末はカタログやチラシを見ています。早く製品のことを詳しく説明できるようになりたいです」と話していました。

この時、私は自分の新人時代のことを思い出しました。彼は、「製品のことを知れば知るほど売れる」と勘違いしていた私と、全く同じ考えだったのです。