9月7日に、執行部の中でもハト派と言えるラエル・ブレイナード副議長は、利上げによるオーバーキルのリスクに言及するいっぽう、インフレ率の動向を見極めるまで時間を要するとの見解を強調した。さらに、9日に講演したオピニオンリーダーとして存在感を高めているクリストファー・ウォラー理事は、「次回会合に向けてさらなる大幅な利上げを支持する」と発言した。

アメリカ経済の減速は来年一段と厳しくなる?

パウエル議長など執行部を含めたFRB高官の発言などを踏まえると、9月会合まで「異例の大幅利上げ」である0.75%利上げが続き、12月FOMCの年末まで合計の利上げ幅は最低でも約1.5%まで広がり、FF(フェデラル・ファンド)金利は年末までに4%を超えて上昇する可能性が出てきた。

このため、3月から続いている大幅な利上げによって、2023年に本格化すると予想されるアメリカ経済の減速がより厳しくなる可能性が高まった。実際に、利上げの景気引き締め効果が本格化する中で、企業業績予想について今後下方修正が大きくなるだろう。一方、これまでのところ企業業績予想の下方修正は、かなり限定的であり、株式市場の景気減速への備えは十分ではないようにみえる。

今後、アメリカの景気減速が本格化する前に、アメリカのインフレ率が早期に3%以下に継続的に鎮静化すれば、いわゆるソフトランディングも可能になる。これはベストシナリオだろう。こうなれば、アメリカ株市場は2022年6月が大底となり、株高局面にシフトするだろう。

ただ、8月まで高インフレが続いていたこともあり、FRBを安心させるインフレ指標が出てくるよりも先に、これまでの利上げによって労働市場の調整を含めたアメリカ経済の失速が、2023年に本格化する可能性が高まっている。この場合は、企業業績の失速をもたらすアメリカ経済の調整が起こるまで、FRBのインフレ懸念が和らがない可能性が高い。

金融引き締めによる経済減速がより本格化し、その後にFRBによる引き締め姿勢が変わると予想されるが、このときがアメリカ株底入れのタイミングになりそうである。ベストシナリオのソフトランディングのケースよりも、アメリカ株が上昇に転じる時期が後ずれする。利上げによる景気減速が強まるため、2022年末と筆者が想定していたアメリカ株の底入れ時期は、2023年に先送りとなる可能性が高まっているように思われる。

もちろん、FRBによる利上げが延々と続くわけではない。9月のFOMCで発表されるメンバーの政策金利見通し(ドットチャート)は、6月時点から上方修正されるとみられる。だが、一方では11月から利上げ幅のペースダウンを始めることが示されそうだ。