それは、安倍元首相の掲げる円安誘導政策によって、輸入品の価格が上がったからだ。このようなインフレは、日本の消費者から外国の生産者に所得を移すだけであり、日本の多国籍大企業の利益を上げることになる。

「3本目の矢」が欲しかった

アベノミクスは、安倍元首相が公約に掲げた経済構造改革、すなわちいわゆる「アベノミクスの3本の矢」のうち「3本目」を真に追求していれば、日本を救うことができたはずである。しかし、そのためには権力を持つ者の既得権に踏み込む必要があり、安倍元首相は前例のないほど国会を支配していたにもかかわらず、構造改革の追求に政治資本を使わないという選択をしたのである。

それは、デフレさえ克服すれば痛みを伴うことなく成長できる、という自らの主張を信じたからかもしれない。一例を挙げれば、巨大な農業協同組合中央会(JA全中)が独占禁止法の適用を受けないため、消費者は高い食品価格を支払わさている。安倍元首相は、JA全中の抜本的改革に着手したと言いながら、実際には、協同組合を解体するという彼自身の諮問委員会の助言を無視した。

それどころか、JA全中のトップである萬歳章氏が「実質的な変化はない」とほぼ認めるような取引をしてしまったのだ。一部の例外はあるものの、このような中途半端な施策が、安倍元首相の「第3の矢」の特徴であった。

もう1つ、安倍元首相が勘違いしていたことがあったが、今回はそれが幸いした。安倍元首相は、アベノミクスが日本再生の「最後のチャンス」であると主張したのである。現実には、国にはたくさんの 「最後のチャンス」がある。安倍元首相の下で日本が衰退し続けることは、日本が復活できないことを意味するのではなく、安倍元首相がその機会を逸したことを意味するのである。

本記事(図表除く)は、ジャパン・フォーカス(英語)による安倍元首相のレガシーを分析する記事の要約版である。

著者:リチャード・カッツ