列車最後部の貫通扉にはしごが設置され、8時33分に降車が始まった。運休に関するアナウンスからわずか8分後という素早さだ。

乗客は係員に荷物を預けて、後ろ向きで下車する。落下してけがをしないようにJR側も細心の注意を払っている。

ところが、8時45分、「はしごが壊れました。ただいま、別のはしごを準備中です」とのアナウンス。「はしごってそんなに弱いのか」と車内は大爆笑。この場所で停車してから2時間近く経つというのに、車内にいらだちの様子は感じられない。「今日は何が起きても笑って許せる」。そんな雰囲気を感じさせた。

記者もJR係員の指示に従い、車両から線路に降りた。そして乗客が10人程度集まるごとに一団となって踏切に向かって歩き始める。おそらくJRにこうした手順があるのだろう。

撮り鉄もバスに手を振ってくれる

踏切から道路に出ると、JRが用意した数台の代行バスがすでに待っていた。窓ガラスに「列車代行」と書かれた紙が貼られている。記者は小出方面に向かうバスに乗車、満員の客を乗せ9時26分にバスが発車した。

途中の「道の駅」でトイレ休憩をした後、10時28分に会津川口を通過。駅前で待機していた大勢の人たちがバスに向かって手を振ってくれた。只見に向かう途中には各所に只見線の撮影ポイントがあり、路肩や付近の駐車場にクルマを停めた撮り鉄たちが、待ち構えている。彼らもどこからか情報を入手したのか、代行バスがやってくると手を振ってくれた。

車内の乗客たちも手を振って応え、この状況を楽しんでいるように見えた。むろん、全員が楽しんでるわけではないだろう。小出から上越線、信越本線、羽越本線と乗り継いで鉄道旅を楽しむ予定だという乗客もいた。小出到着はかなり遅れそうだ。おそらく今後の予定が大幅に狂って困っているに違いないが、「めったにない経験ができたから、まあいいか」と、いらだつ様子はなかった。