グローバル化の問題点は「新しい階級闘争」を生み出した。新自由主義改革のもたらした経済格差の拡大、政治的な国民の分断、ポリティカル・コレクトネスやキャンセルカルチャーの暴走である。

アメリカの政治学者マイケル・リンド氏は、このたび邦訳された『新しい階級闘争:大都市エリートから民主主義を守る』で、各国でグローバル企業や投資家(オーバークラス)と庶民層の間で政治的影響力の差が生じてしまったことがその要因だと指摘している。

私たちはこの状況をいかに読み解くべきか。同書に寄せられた評論家の中野剛志氏による解説を一部編集の上、お届けする。

「リアリズム」と「経済ナショナリズム」

マイケル・リンドという思想家の名は時折耳にしたことがあり、興味も持っていたが、うかつにも、これまで彼の著作を読んだことはなかった。

だが、今回、本書『新しい階級闘争』の解説を依頼されたことを契機に、本書を含む彼の著作に触れた。

そして、本書の解説を依頼された理由を知ることとなった。というのも、リンドの思想は、私がこれまで展開してきた主張と、ほとんど同じであったからだ。

たとえば、リンドが2015年にナショナル・インタレスト誌に寄稿した「アメリカのナショナリズムの擁護(The Case for American Nationalism)」 に目を通してみよう。

この論文の中でリンドは、冷戦終結前までのアメリカの戦略を支えてきた戦略思想を擁護する。