10月11日、入国者数の上限が撤廃されるなど、新型コロナウイルスの水際対策が大幅に緩和された。各地の観光地で、かつてのにぎわいが戻ることへの期待が高まるが、これを手放しでは喜べないとするのが、星野リゾート代表の星野佳路氏だ。星野氏は「インバウンドは、コロナ前の2019年の状態が決してベストではなかった。コロナ禍後に向けては、単に数字を戻すのではなく、これまでの観光課題を解決しながら無理なく成長していくことが大事だ」とする。

旅行需要が大きく戻るであろう今後に向けて、観光課題解決のためにどのような対策をとるべきか等について星野氏に聞くとともに、横浜、鎌倉、箱根などの大観光地を県下に抱える神奈川県での取り組みについて、神奈川県観光協会の望月淳会長に聞いた。

オーバーツーリズムとインバウンド格差

2019年時点での観光課題として真っ先に頭に思い浮かぶのは、オーバーツーリズムの問題であろう。

水際対策の大幅緩和や全国旅行支援などの影響もあり各地の観光地ににぎわいが戻りつつある。写真は10月16日の横浜中華街(筆者撮影)

東京、大阪、京都などの大都市や、一部の有名観光地は観光客で溢れ、住民の生活に支障をきたすといった事態が生じていた。一方で、地方によってはインバウンドがまったく来ず、経済的恩恵にあずかれないという「格差」も生じていた。星野氏は、このような現象を「インバウンド格差」と呼ぶ。

日本政府観光局(JNTO)の都道府県別訪問率ランキング(2019年)を見ると、東京(47.2%)、大阪(38.6%)、千葉(35.1%)、京都(27.8%)などの大都市圏は、インバウンドが高い割合で訪問しているのに対し(カッコ内は訪問率)、秋田、福島、徳島は0.3%、島根、福井、高知は0.2%と、わずかな訪問率に留まっている。