歴史的な円安局面が続く中、「円」の弱さが連日報道されている。アメリカ・ニューヨークに進出している大戸屋で「しまほっけの炭火焼き定食」を頼むと、25ドル。チップに5ドル置いたとしたら30ドル。今の日本円に換算して4500円近くになってしまう。アメリカに進出した大戸屋は高級店として成功しているとはいえ、日本だと税込1000円のメニューだから4倍以上。もともとの物価の違いを抜きにしても、あまりに差がある。

日本円がここまで弱くなった背景はいうまでもなく「インフレ」と「円安」の影響だが、気になるのは日本だけが世界の趨勢に逆らって、金利を上げていないことだ。32年ぶりに1ドル=152円台突破を目前にしながら、相変わらず日本銀行の黒田東彦総裁は、「金利を上げる意思は無い」と繰り返し述べている。

一方で、日本銀行は「金利を上げたくても上げられないのではないか」という指摘も数多く聞こえてくる。

10年間、低金利と低インフレ下で安定した経済と政治を謳歌してきたイギリスは、中央銀行が金利引き上げに転じ、財源のない減税案を新政権が発表した途端に、ポンドが過去最安値に沈み、イギリス国債が猛烈な売りを浴びせられた。「イギリスの次は日本」「日本はその程度では済まない?」などと市場関係者はささやく。円安と金利がもたらす最悪のシナリオを考えてみたい。

国債暴落、日銀の信用失墜による最悪シナリオも

黒田総裁は「現在のインフレは一時的なものであり、来年になれば収まる」「国内は需要不足の状態が続いており、金融引き締めに転じるには時期尚早」とコメント。日本だけが超低金利の金融緩和を維持し、円が売られる「円安」の状態が続いている。財務省は複数回の「為替介入」を覆面介入を中心に実施し続けている。

日銀が動かない原因については、さまざまな意見が指摘されている。アベノミクスの失敗を認めたくない、といった感情論まで含めて、専門家が指摘している日銀の懸念をピックアップすると、ざっと次のようになる。

①当座預金残高への利払い発生懸念
②金利上昇=保有する国債価格下落によるバランスシート悪化への懸念
③金利を上げても止まらない円安への懸念
④金利高=景気後退からくる日本政府の財政に対する懸念
⑤国内のゾンビ企業破綻に対する懸念
⑥アベノミクス神話に対する懸念 

この中で現在、最も懸念されているのが①の当座預金残高への利払い問題だ。日銀には民間銀行などから当座預金に莫大な資金が預けられており、現在の当座預金残高は491兆円(9月9日現在、予想)。今年3月末にははじめて522兆円に達した。マイナス金利が適用されている現在、金利は付与されないが、金利を上げれば一部の当座預金に金利が支払われる。