故・安倍晋三元首相の後継会長選びで、自民党の最大派閥「安倍派」(清和政策研究会、97人)が迷走している。当初有力視された塩谷立会長代理(当選10期・72)の昇格案が、同派中堅若手などの反対で頓挫したためだが、背景には次期総裁選に向けての激しい主導権争いがあり、円満決着への道筋はまったく見えてこない。

旧統一教会問題における山際大志郎氏の経済再生相の辞任(事実上の更迭)などで岸田文雄政権の危機が深刻化する中、党所属議員の4分の1超の勢力を持つ安倍派の混乱は、岸田首相の政局運営の大きな不安要因ともなっている。このため、総裁派閥の岸田派を筆頭に、党内の他の派閥・グループは、安倍派の動向に神経をとがらせている。

「国葬」以降も紆余曲折

昨年暮れの安倍派発足以来、事実上の党最高実力者として同派を支配してきた安倍氏が、7月8日に突然非業の死を遂げてから、すでに3カ月半あまりが経過。その間、安倍派は9月27日の「国葬」まで、「喪中」を理由に表立った後継者選びの動きを自制してきた。

しかし、「喪明け」となった9月末以降も派内調整は紆余曲折を繰り返している。国葬以降の「節目」となった10月15日の「山口県民葬」には、塩谷氏をはじめ同派議員85人が参列。第2次安倍政権下で会長を務めた細田博之衆院議長が弔辞で安倍氏の功績を称えつつ故人を偲び、塩谷氏も「派の結束」を訴えたが、後継会長問題決着への機運は盛り上がらなかった。

ただ、後継会長選びの難航は「予想されたこと」(自民長老)でもあった。これまで候補と目されたのは、下村博文元文部科学相(9期・68)、松野博一官房長官(8期・60)、西村康稔経済産業相(7期・60)、萩生田光一政調会長(6期・59)、稲田朋美元防衛相(6期・63)、世耕弘成参院幹事長(5期・59)の6氏だが、昨秋の安倍派結成前から、それぞれの足の引っ張り合いが目立っていたからだ。