今年8月下旬、あるケアマネージャー(介護支援専門員)より、私が代表を務める訪問看護ステーションに「コロナ陽性となり、訪問介護に行けなくなった方がいるのですが、内服の管理等、期間限定の訪問看護は可能でしょうか?」という打診の電話があった。

70代後半の独居男性、吉村啓介さん(仮名)。生活保護を受給しており、身寄りはない。認知症のほか、脳梗塞、心不全、慢性気管支炎などの持病があった。その日は38℃台の発熱で病院を受診し、コロナ陽性の診断。血中酸素飽和度90%台前半で自宅療養となったが、吉村さんの自宅へ毎日通っていた訪問介護事業所は、コロナ陽性者の対応をしていなかった。

認知症の独居高齢者がコロナ陽性になったら

認知症のある高齢者は、たとえコロナに罹患したとしても、体調変化に気付きにくく、自ら受診することが難しい。しかし、吉村さんのように認知症のある独居高齢者がコロナ陽性になってしまった際に、訪問介護のヘルパーが撤退してしまう事例が相次いでいる。

吉村さんが通っていた訪問介護事業所の管理者は「感染症対策の専門的知識がないヘルパーを、無理に派遣することはできない」というスタンスだったが、吉村さんには認知症があり、現にヘルパーが当日分の薬を手渡しし、その場で内服確認をしていたため、誰かしらの助けが欠かせなかった。

1日1回の内服介助のほか、おむつ交換、食事や水分の摂取状況の確認など、見守りなしには生活できないうえに、呼吸状態の悪化など、体調変化は周囲が察知する必要がある。そのため、ケアマネージャーが、コロナ陽性者の対応可能な訪問看護ステーションを探し、私たちが介入することとなった。

訪問看護には、主治医からの訪問看護指示書が必要だ。吉村さんに対しては、ケアマネージャーがかかりつけ医に利用者の状態を連絡し、訪問看護指示書を依頼してくれた。私たちは依頼当日から吉村さん宅へと訪問を開始。訪問初日の血中酸素飽和度は93%だった、吉村さんはタバコを吸いながら「苦しくない」とにこやかに話していた。翌日からは、同98%に上昇した。