ウクライナ情勢が依然として緊迫と混迷の度を深めている。ロシアの核兵器使用への懸念も出ているが、破局的な結末など誰も望んではいない。では、ウクライナ戦争はどういう形で決着できるのか。外交官として長年、対ロシア外交に関わってきた東郷和彦氏は「ロシアの侵攻は許されないが、“ロシアを打ち負かせ”という視点からだけ見ていると情勢を見誤る」と主張する。新著『プーチンVS.バイデン』において、一刻も早い停戦交渉の実現を訴える東郷氏に、ウクライナ戦争への視点を尋ねた。

プーチンなりの「道理」「正義」がある

――日本では「ウクライナ戦争の非はロシアにある」という見方が定着しています。この状況をどう見ていますか。

今年2月24日、プーチンのロシアがウクライナに攻め込み、今日に至っていることは事実です。ロシア軍の行動は一刻も早く抑制されるべき。私も含め、多くの人はそこに異論はないでしょう。

まずは停戦に持ち込むのが必須。これ以上、罪のない子どもたちや女性、高齢者、意に反して駆り出された戦闘員らの犠牲を増やしてはなりません。被害の拡大は憎悪の連鎖につながります。プラスは何もありません。

しかし、ウクライナ戦争の本質は、どこにあるか。停戦に向けてはそこを見極めなければならないでしょう。ゼレンスキーが完全な善で、プーチンが完全な悪とする見方は、一方的なものであり、プーチンの立場に立てば、この戦争にはプーチンなりの“道理”“正義”があると思います。「プーチンは正気を失った」といった見方が一部で出ていましたが、そんなことはまったくありません。

――具体的にはどういうことでしょう?

ウクライナ戦争は冷戦崩壊時から押さえていく必要があると思います。