第3の要因として挙げられるのは、ウクライナ侵攻をめぐるロシアへの制裁が燃料価格の高騰につながり、そのことが一般市民の生活を圧迫し、政府に対する不満の鬱屈に帰結している点だ。ジョンソン政権のスキャンダルへの不満は、このような生活費の高騰に伴う国民の怒りと化学反応を起こして、より大きなものへと燃えさかっていった。

このようにして、ブレグジットやコロナ禍の影響と、エネルギー価格の高騰に結びついたことが、イギリスの経済状況をよりいっそう悪化させた。今年の4月19日に発表された国際通貨基金(IMF)の世界経済見通しによれば、2023年のイギリスの経済成長率は1.2%となる見通しで、これはG7の中では最も成長が鈍化する国となることを意味する。またこれは、G20の中でも重い制裁が課されているロシアに次いで、最も低い経済成長率となる。

イギリス経済は、深刻な経済危機に陥る見通しにありながら、さらに政治の混乱が社会の不安を増幅させている。その背後には、イギリス政治におけるポピュリズムの浸透が見られる。

ポピュリズム政治が増大させた政治不信

イギリスは、議会制民主主義の母国として、その政治体制はこれまで世界の多くの民主主義諸国の模範と見なされてきた。二大政党制に基づいた安定的な政権交代により政治に変革が生まれ、戦後の福祉国家の成立や、1980年代以降の新自由主義の政治的潮流など、世界に新しい政治の風をもたらしてきた。そのイギリスが現在、深刻なポピュリズム政治の波にのみ込まれている。

2019年7月、イギリス保守党の代表選挙において、党員はより理性的で、より現実的な政策を志向するジェレミー・ハント氏ではなく、それまで繰り返しポピュリスト的言動を繰り返してきたボリス・ジョンソン氏を選んだ。ジョンソン首相はしばしば、法律を軽視する発言をし、ヨーロッパ大陸の諸国を挑発し、そして過剰にイギリスの偉大さを賛美した。それにより、イギリス国民が困難な現実を直視せずに、甘美な言葉に陶酔する方向へと導いた。

そして2022年9月、ジョンソン首相辞任を受けた保守党代表選挙では、その財政政策が高く評価されていたリシ・スナク氏ではなく、富裕層や生活困窮者の双方に迎合する姿勢を示すリズ・トラス氏を首相とすることを好んだ。