中国河南省の鄭州市で発生した新型コロナウイルスの流行が、アップルのスマートフォン「iPhone」の受託生産工場に波及し、製品の生産と出荷に大きな影響が出ている。

問題の工場は、EMS(電子機器の受託製造サービス)大手の富士康科技集団(フォックスコン)が鄭州市に持つ生産拠点だ。アップルは11月6日に声明を出し、厳しい防疫対策の影響によりフォックスコンの鄭州での生産台数が大幅に減少していることを認めた。具体的には「iPhone 14 Pro」と「iPhone 14 Pro Max」の2機種の出荷台数が計画を下回り、購入者が製品を入手できるまでの時間が長くなる見通しだ。

アップルにとって、フォックスコンはiPhoneの最大の生産委託先である。フォックスコンは中国に複数の巨大工場群を擁し、そのうち鄭州市と広東省深圳市がiPhoneの2大生産拠点となっている。フォックスコンによれば、上述の2機種の生産を担う鄭州市の拠点では20万人余りの従業員が働いているという。

鄭州市で新型コロナの感染拡大が始まったのは10月中旬のこと。フォックスコンの生産拠点は(ウイルス侵入を防ぐために人の出入りを厳しく制限する)閉鎖式管理を実施して生産を続けたが、従業員たちは大きなストレスにさらされた。

集団脱走の動画がネットで拡散

そして10月末、感染を恐れた大勢の従業員がパニック状態に陥り、工場を集団脱走する事件が発生。その動画はネット上で次々に拡散された。

この想定外の混乱は、アップルにとって最悪のタイミングで起きた。これから年末にかけての(アメリカの感謝祭商戦や世界各地のクリスマス商戦が続く)書き入れ時に、十分な数のiPhoneを出荷できなくなったからだ。

市場調査会社の集邦諮詢(トレンドフォース)は、鄭州市での新型コロナの流行は落ち着きつつあり、フォックスコンの生産拠点の稼働率は70%程度まで回復したと分析。とはいえ、稼働率を短期間で元の水準に戻すのは難しく、10〜12月期のiPhone(シリーズ全体)の出荷台数は計画の8000万台より200万〜300万台減少すると予想する。

本記事は「財新」の提供記事です

フォックスコンは失地回復を図ろうと懸命だ。鄭州市の拠点では11月1日、出勤日数に応じて従業員に支払う上乗せ手当を1日当たり100元(約2039円)から400元(約8157円)に引き上げ、新たな人手をかき集めようとしている。

「会社が講じた対策により、11月下旬にはフル生産に戻したい」。財新記者の取材に応じたフォックスコンの関係者は、そう期待を示した。

(財新記者:翟少輝、劉沛林)
※原文の配信は11月7日

著者:財新 Biz&Tech