来春の静岡市長選に向けて、4期目を目指していた現職の田辺信宏市長は12月2日の静岡市議会で突然、不出馬を表明した。

自民党静岡支部(旧静岡市)は全会一致で田辺氏の推薦を決め、市長選出馬を要請していた。「反リニア」の旗頭、川勝平太静岡県知事の最側近だった難波喬司・元副知事の出馬表明に恐れをなして、撤退を決めた格好となってしまった。

田辺氏が「リニア推進」へ積極的な姿勢を見せてきたのに対して、県のリニア問題責任者として、難波氏は川勝知事同様に静岡工区着工を許可しない対応を取り続けてきた。難波氏が新市長に就けば、行政権限を駆使して、JR東海にさらなる厳しい姿勢で臨むことは確実だ。

川勝知事は田辺市長を批判

「反リニア」を掲げる市長が誕生すれば、JR東海はまさに絶体絶命の危機に追い込まれる。

川勝知事は事あるごとに田辺氏を批判してきた。静岡市を廃止して県の特別区を設置する珍妙な「静岡型県都構想」を掲げ、「県都に2人の船頭は不要だ」とぶち上げるなど、田辺氏を一方的に嫌い続けてきた。

このため、川勝知事は2019年4月の静岡市長選に難波氏を出馬させようと画策したが、経済界の支援などを得ることができず、結局、難波氏は県政記者クラブで不出馬会見を行った。

当時の市長選には、難波氏の代わりに元静岡市長の県議が辞職して出馬、川勝知事が支援に回った。元市長、共産党候補との三つ巴の選挙戦で、田辺氏は薄氷の勝利をおさめた。

来春の静岡市長選を控え、田辺氏の政治環境は最悪だった。9月の台風15号の大きな被害を受けた清水区約6万3000世帯の断水による初動態勢の遅れなどで市民の評価は著しく下がっていた。

10月末、酒井公夫・静岡鉄道代表取締役会長は静岡商工会議所会頭を辞任するに当たって、田辺氏を訪ね、「難波氏を支援するから、市長選出馬を断念するよう求める」などと宣言した。