環境破壊、不平等、貧困……今、世界中で多くの人々が、資本主義が抱える問題に気づき始めている。経済人類学者のジェイソン・ヒッケル氏によれば、資本主義は自然や身体をモノと見なして「外部化」し、搾取することで成立している、「ニーズを満たさないことを目的としたシステム」であるという。そしてヒッケル氏は、「アニミズム対二元論」というユニークな視点で、資本主義の歴史とそれが内包する問題を白日の下にさらし、今後、私たちが目指すべき「成長に依存しない世界」を提示する。今回、日本語版が昨年4月に刊行された『資本主義の次に来る世界』について、東京大学大学院准教授で、『人新世の「資本論」』の著者の斎藤幸平氏に話を聞いた。前編と後編の2回に分けてお届けする。

脱成長は世界的トレンド

新世代の脱成長論の第一人者として世界的に注目されているバルセロナ自治大学のジェイソン・ヒッケル氏は、マルクス主義や社会主義の伝統から強い影響を受けています。

実際、気候変動問題の根幹には資本主義そのものの矛盾があり、本当に解決するのであれば、資本主義という無限の経済成長に駆り立てられたシステムを乗り越え、脱成長型の社会に移行しなければいけないというメッセージをはっきりと打ち出しています。

私自身も、ヒッケル氏に影響されて、『人新世の「資本論」』(集英社新書、2020年)では、コミュニズムと脱成長について書きました。

若い世代による新しい脱成長論は、今、世界的なトレンドになりつつあり、ヒッケルたちの研究チームは、EUから億単位の研究費をもらうようにまでなっています。経済格差だけでなく、気候変動、生物多様性などの生態学的危機も深まるだけなく、資本主義が再び問題視されるようになっているのです。