ウクライナ侵攻による制裁や体制の腐敗、高齢化、肥大化に苦しむロシア。一方、宇宙ステーション「天宮」、月面探査車「玉兎2号」などで宇宙開発をリードする中国。本稿は元自衛隊空将の長島純氏の著作『新・宇宙戦争』より一部抜粋・再構成のうえ、ロシアと中国の宇宙戦略を解説します。

ロシア──最初に人類を宇宙に送った国

本稿では、ロシアと中国の宇宙戦略について述べたいと思いますが、まず歴史的経緯を振り返りましょう。

ロシアの前身であるソビエト連邦は、1957年のスプートニク1号によって、最初に人類を宇宙に送りました。旧ソ連崩壊後は、宇宙ステーションの運営、ロケット打ち上げなどの面で、西側諸国とロシアは良好な協力関係を築きながら、民生、軍事、科学技術のあらゆる面で宇宙の主要プレイヤーであり続けました。

しかし、2014年のクリミア併合以降、西側諸国との関係が急激に悪化し、2022年のウクライナ侵攻によって、ロシアの覇権主義的な領土拡張の野望と既存の国際秩序への挑戦に対する警戒が一気に高まり、その宇宙計画も大きな影響を受けることになりました。

歴史的に、ロシアの宇宙計画は軍事利用を中心に進展してきており、関連する技術の多くは、軍事目的のものからスピン・オフ(民事転用)されていったものです。例えば、冷戦期の宇宙ステーションは宇宙兵器のさきがけとして期待され、国際宇宙ステーション(ISS)の打ち上げに使用されているソユーズ・ロケットは、核開発のために製造された大陸間弾道ミサイル(ICBM)用のR−7ロケットから派生されたものです。