日本プロ野球で2015年まで実に27年間の現役生活を送り、史上最多の通算3021試合出場を果たした谷繁元信氏。横浜ベイスターズ、そして中日ドラゴンズでチームの要であるキャッチャーとして長期間にわたって活躍しました。監督としても中日で2014年から選手と監督を兼任、引退後の昨シーズンは専任監督を務めました。

プロフェッショナル集団のリーダーは、チームとともにどのような心構えで練習や試合に臨んだら良いのか。そして、周囲にどのように目を配り、どうコミュニケーションを取るべきなのか。著書『谷繁流 キャッチャー思考』にも記されている、ビジネスの世界にも通じる「準備」と「復習」に立脚したプロの思考法を明かします。

今年の春に、プロ入り後初めてスーツを着てキャンプ地を訪れました。これまでは自分が所属したことのあるベイスターズとドラゴンズの練習しか知りませんでしたが、このキャンプで初めて他球団の練習を見ることになりました。当然ながら、自然と目が行くのはキャッチャーの練習風景です。

ある球団では、キャッチャー陣がホームからのノックを1塁ベース付近で受けて2塁や3塁に送球する練習をしていました。その時にふと気になることがありました。ノックを受けたらすぐに球を右手で持って、一度キャッチャー座りをしてから立ってスローイングしていたのです。

しかし、実際の試合では、キャッチャーはそのような動きをしません。キャッチャー座りから立つ際に球を持ち替えているのであれば、走者を刺す時の実践練習にはなりますが、そのような練習はしていませんでした。

また、3塁ベース付近でノックを受けて1塁に投げる練習では、捕球して2、3歩ステップしてから送球している姿が見られました。しかし、実際の試合では、キャッチャーは一歩で投げないと走者をアウトにすることはできません。その送球に対して「ナイスボール!」と誰かが叫んでいましたが、どんなにナイスボールであっても、ステップを踏んでいたら間に合わないのです。

「練習のための練習」に陥っていないか

その球団がどういう意図でそういった練習をしていたのか、聞いてみないと真意はわかりません。でも、長年キャッチャーとして経験を積んできた僕の目には、それが「練習のための練習」のように映りました。

別の球団では、投内連携(投手と内野手の連携守備)での併殺の練習を見学させてもらいました。キャッチャーは3人いましたが、3人なら2人分のインターバルがあるのでそこまできつくないはずです。しかし、3人とも一塁へのバックアップに3歩くらいしか動いていませんでした。

僕が現役時代にその練習をやっていた時は、練習であっても当たり前のように1塁ベースの後ろまでバックアップのために走っていました。なぜならば、練習で繰り返した動きが、試合にそのまま反映されるからです。また、ランナーが3塁にいるにもかかわらず、キャッチャーは座ったままピッチャーに返球していました。

もしも球を離した瞬間に暴投となり、一瞬のスキを突かれてホームに還られたらどうするのでしょうか。おそらくその選手たちは、試合になればちゃんとできると思っているのでしょう。しかし、そういった行いは、必ず試合のどこかに出てきます。