料理番組の歴史は、戦後日本の食文化と庶民のニーズをダイレクトに反映する歩みでもあった。食文化に精通する作家の阿古真理さんが、料理番組の変遷を生活史の視点から考察する。

グルメ時代の到来と料理を伝えるテレビ番組の多様化

江戸時代後期の19世紀は、庶民の料理文化が花開いた時代だった。料理本などの出版が盛んで料理屋が発達し、ミシュランのような料理番付が発表される。庶民文化が爛熟する文化文政期(1804〜30年、化政期とも呼ばれる)には、「単なる料理本の刊行にとどまらず、料理屋とコラボレートして、出版をプロデュースする版元が現れる」(原田信男『和食とはなにか』角川ソフィア文庫)ほど盛り上がっていた。その手法で出されたのは、例えば江戸を代表する高級料理屋、八百膳の魅力を伝える本や模型。食の情報文化が発達していたのである。

今、テレビで毎日、たいていの時間帯に料理が映される様子を眺めていると、化政期の江戸はこんな雰囲気だったのかもしれないと思う。

「きょうの料理」(NHK Eテレ)などの料理教室的な番組だけでなく、「秘密のケンミンSHOW」(読売テレビ)などのバラエティ番組や情報番組でも、料理の作り方を紹介する。昨年まで放送していた堺正章の「(新)チューボーですよ!」(TBSテレビ)と「SMAP×SMAP」(関西テレビ/フジテレビ)は、タレントが料理を作りつつ、ゲストと対談した。「男子ごはん」(テレビ東京)は、料理教室的ながら料理研究家とタレントの軽妙な会話も楽しめる。

平日は「あさイチ」(NHK)に料理コーナーがあり、「きょうの料理」があり、「上沼恵美子のおしゃべりクッキング」(朝日放送)、「キユーピー3分クッキング」(日本テレビ版、CBCテレビ版)がある。

週1回の放送では、月曜日に「くいしん坊!万才」(フジ)、「グレーテルのかまど」(NHK Eテレ)が放送され、土曜日には「満天☆青空レストラン」(日テレ)、「食彩の王国」「ごはんジャパン」「おかずのクッキング」(テレビ朝日)、日曜日には「男子ごはん」などが料理の作り方を紹介する。