職場の安全対策や健康診断後のフォローまで、幅広い対応を行う産業医。国を挙げて「働き方改革」が進められ、健康経営への注目がにわかに高まる中、医学の専門家の知見をどのように生かし、企業の発展につなげていくべきか。産業医のあり方が変わり始めている。

いったい何が変わりつつあるのか。現在6社で産業医を務める尾林誉史氏に話を聞きながら、今後の課題について考えてみたい。

「産業医も、企業の成長を支える社員の一人」

「お久しぶりです。今、どんな仕事をしているんですか?」

尾林氏は月に1度、契約を結んだ企業のオフィスを訪れ、従業員にこんなふうに話しかける。「職場巡視」と呼ばれる、産業医業務の一環だ。単に社内を見て回り、職業病や労働災害につながりそうなリスクを探るだけではなく、従業員とコミュニケーションをとって、顔の見える関係づくりに励んでいるという。こうした関係づくりが、「従業員が産業医に相談しやすい環境」につながると考えているからだ。

「産業医もある意味、企業の成長を支える社員の一人。自分が“顔の広い社員”になることで、『仕事がつらいな』という時、気軽に相談してもらえる雰囲気をつくることが目的です。『産業医面談=何か問題を抱えた社員が受けるもの』という誤ったイメージもあると思うので、多少ずうずうしく思われてもコミュニケーションをとってハードルを下げつつ、従業員の抱える問題が深刻化する前に手を打ちたいと考えています」(尾林氏)