わが国の認知症患者は予備軍も含めると900万人以上、2025年には1300万人と推定されている。認知症は高齢者の病気と思われがちだが、40代、50代の患者も珍しくはない。64歳以下の認知症を若年性認知症と呼んでいるが、その数は4万人弱で男性に多い。

原因はさまざまだが、最近、注目されているのがスポーツなどによる頭部外傷だ。頭に強い衝撃が加わることで、将来認知症発症リスクが高まるという。日本ではあまり知られていないが、米国ではアメフト選手に若年性認知症が多く、社会問題となっている。2015年にはこのことをテーマにした映画『コンカッション』(脳震盪)(主演ウィル・スミス)がゴールデングローブ賞にノミネートされたほどだ。

私は大学病院のメモリークリニック(もの忘れ外来)で、認知症やその予備軍の患者さんを診察しています。最近、40代、50代の働き盛りの方が「もの忘れがあるが、認知症ではないか」と心配して受診するケースが目につくようになりました。

親の認知症を心配こそすれ、自分の認知症を心配する年齢ではないのですが、この世代にも認知症への関心が高まっているのだと思います。

実際、ある調査では、40代以上で「いちばんなりたくない病気」と「いちばん知識のない病気」のトップは認知症という結果が出ており、今や認知症はがんと並んで恐れられる病気といってもいいかもしれません。

脳の病気、主に認知症の研究と診療に携わって25年が経ちましたが、この20年間で認知症の発症メカニズムがだいぶ解明されてきました。しかし、まだわからないことも多く、特効薬の開発には至っていません。現段階では、認知症はいったんかかったら治すことができない進行性の病気なのです。

認知症は脳に特殊なごみが蓄積するのが原因

認知症は高齢になればなるほど増加するため、65歳以上を認知症、それ以下で発症する場合には若年性認知症と呼んでいますが、年齢によって分けただけで、発症メカニズムなどは基本的には同じです。