川柳ブームが続いている。累計応募数100万句突破の「サラリーマン川柳」や、「シルバー川柳」「女子会川柳」「ブラック企業川柳」、twitterで火がついた「オタク川柳」など、社会の多様化に合わせテーマも人気も広がりをみせる。

ところでこの「川柳」、そもそも人名であることをご存じだろうか。しかも、その名(号)は江戸時代より代々受け継がれている。折しも先日、新たに継承した「川柳」氏の襲名披露があった。市井の人々が育んだ文芸を背負う、宗家「16代目」に会いに行った。

束の間の晴れ間にゆれるランヂェリー

都内、区民施設の会議室に10人ほどが車座になっている。女性が多めで、年齢層はやや高め。ただ、アラフォーから90歳代までと幅広い。週末の午前。始まったのは、川柳愛好家が集まって自作を披露する「句会」である。

《生玉子うまくは割れぬ人の道》

これは、74歳の男性が吐いた句(俳句は“詠む”で、川柳は“吐く”なのだそうだ)。選者で指導する講師は「生きざまが言語化されている。いい作家になったねえ」と評して、秀句のひとつに加えた。1人10句の中から選ばれた作品は単なるダジャレ、言葉遊びだけではない、なんとも味わいある言葉が並ぶ。一般公募川柳で見掛ける“あるあるネタ”で笑いを誘うものとはどこか趣向が異なる感じだ。

「この先生は今までとぜんぜん違うの。楽しくて難しい。日々いつのまにか句のことを考えたりして、川柳は生活の窓口です」

93歳の女性が話す。見出しの“ランヂェリー”の句は彼女の作だ。5・7・5の同じ17音でも、川柳は俳句と違って季語などに縛られない自由な雰囲気がある。「難しい」と言いつつも、川柳句会ではうなって一句ひねり出す様子はない。参加者は世相や人間模様をイキイキ吐き合う。