時間が空いたとき、スマホでSNSやネットサーフィンを楽しむ人は多いと思います。ですが、のめり込みすぎると当然デメリットも出てきます。私たちが普段意識しない「過度なスマホ利用のデメリット」とは? 明治大学教授の齋藤孝さんが解説します。

フェイスブックやLINE、インスタグラムといった情報空間で、私たちは四六時中誰かとつながっている状態です。しかも日本だけでなく世界中の他者とつながっていられる状態になってしまったのです。

とんでもなく便利なことですが、考えてみると異常な状況でもあります。自分の個室にいつでも他人がノックなしに入ってくる。しかもそれが1人とは限らない。その状態が切れ目なしに続く。

これは精神衛生上、望ましい環境とは言えません。1人になって精神を落ち着かせる時がない。相手から連絡が来たらすぐに返事を出さないといけない。既読して何時間もスルーしているとお互いに気まずくなってしまう。かといって、いい加減に返事を出すと誤解されてしまう。いろんなことに細かい神経を使わされているのです。

しかもそのネット空間では、不安やイライラをかき立てる要素があります。突然の悪意のこもったコメントや返信を見て、怒りを覚えたり憎しみを感じたり、感情を荒立てる場面にも遭遇します。

軽い緊張状態、興奮状態がずっと続いている感じといったらいいでしょうか。24時間、つねに誰かとつながっている感覚で、切れ目やオフがない状態といってもいいかもしれません。そんな軽い緊張状態、興奮状態が続くと、明らかに集中力がなくなり、判断力や意志力が衰えます。

「人間の判断力」は有限である

最近の行動心理学や社会心理学の分野での常識の1つが、「人間の判断力や意志力といった精神力は有限である」ということ。ちょうど筋肉と同じです。筋肉は使うと疲労が蓄積し、どんどん力が落ちていきますね。

精神力も同じで使うほどに減っていくことがわかっています。いったん休息して疲労物質が分解されて初めて、再び筋力と同じように戻ってくる。

アメリカで行われたある実験ですが、被験者を3つのグループに分けます。それぞれにパズルの難問を解かせるのですが、その実験の前に別々の楽屋に待機してもらいます。じつは3グループともに空腹にしておいてもらい、1番目のグループの楽屋にはお菓子が置いてあり、自由に食べてよいと告げます。

2つ目のグループの部屋には何も置いていません。最後、3つ目のグループの楽屋には同じようにお菓子が置いてあるのですが、食べてはいけないと告げます。

その後、同じパズルを解かせるのですが、じつは絶対に解けないパズルで、何分間粘って考え続けられるかを測るのが目的です。