それぞれ暮らす国も年齢も立場も異なる3人の女性の生き方を描いた小説『三つ編み』。フランスでは100万部を超すベストセラーとなった同作は、32言語に翻訳され、各国で話題になっている。フェミニズム小説でありながら、世界の男性からも「この本を読んで妻のためにフェミニストになった」「女性がこんなに苦労しているとは。世界は変わるべき時が来ている」と共感を集めているという。

物語はインド、イタリア、カナダで繰り広げられる。登場するのは、他人の糞便を素手で拾い集める「スカベンジャー」として生きながらえながら幼い娘の将来を憂えるスミタ、イタリア・シチリアで父親の家業であるかつら製造工業を継ごうとするジュリア、そして、カナダ・モントリオールで辣腕弁護士として活躍しながらも病に冒されるシングルマザー、サラという女性たちだ。抱える問題は3人3様だが、読み手は彼女たちが女性でなければおそらく直面しない壁にぶち当たる場面に何度も遭遇する。もがきながら前に進む彼女たちは、最後に思わぬ絆で結ばれる……。

危険な環境に身を置いているインド人女性

著者のフランス人のレティシア・コロンバニ氏は、『アメリ』で知られるオドレイ・トトゥ主演の『愛してる、愛してない…』などを撮った映画監督であり、脚本家、女優でもある。映画監督として成功しているコロンバニ氏は、初の小説を1年半かけて執筆した。最初に造形ができた登場人物は、意外にもコロンバニ氏からほど遠い境遇にあるスミタだった。

3カ国とも行ったことがあるというコロンバニ氏は、今回とくに現地取材はしていない。しかし、世界最大規模の放送番組アーカイブを有するフランス国立視聴覚研究所(INA)に通った。そこで不可触民について、インド女性について、スカベンジャーとその仕事について、髪の毛について、数日間ドキュメンタリーにどっぷり漬かって情報を得て、イメージをふくらませていった。もちろんシチリアの毛髪業者についてなど、ほかの登場人物に関わる資料も調べている。

著者のコロンバニ氏(写真:Celine Nieszawer)

「スカベンジャーという仕事を知ったときは、もちろんショックでした。排泄物を掃除するのに裸足で働く彼らは、病気になるのです。500万人もの人がトイレなしに生活しています。インドは、とくに農村部で多くの問題を抱えている。世界で最も女性が危険な環境に置かれている国の1つだと思います。

スミタは不可触民であり、女性なので、二重の意味で最底辺にいます。しかし、スミタは母親として闘おうとしたとき、自分の中に強さと勇敢さを発見する。私は彼女に希望を与えたかった。なぜなら私は楽観的な人間で、彼女は変わるチャンスを得られると思ったからです。幼い娘を持つ同じ母親として、スミタにとても共感を寄せています。(スミタの娘の)ラリータの人物像は、娘から着想を得ました」