ヒロインの父が頑固で男尊女卑、ええかっこしいで、しかも都合が悪くなると「ちゃぶ台ひっくり返す系」。根深いコンプレックスを抱えているというのも、実は好物である。

北村は商家の丁稚奉公上がりで、学も商才もない。情に流されて人にだまされる。家族が困窮しているのに、やたらと人を拾ってくる。戦後PTSDを抱えたインテリ男性・佐藤隆太を連れてきたり、生活に困った一家を勝手に連れてきて面倒みてやったり(揚げ句の果てに金を盗まれる)。そのせいで家族が苦しんでいても気にしない。優しくてお人好しにもほどがある。

さらには交渉下手というか、話を最後まで聞かず、詰めが甘い典型である。戸田の大阪の就職先しかり、勝手にとりつけてきた縁談(相手はノンスタイル・石田明)といい、その交渉術の精度の低さには愕然とした。

要するに、社会では通用しづらいが内弁慶の父。それでも「女子に学問は必要ない」などと前近代的な父権を振りかざして、娘たちを苦しませる。そんな父をなだめすかしながらも、成長して超えてゆく娘の姿を見るのが、たまらなく好き。個人的に。父の切なさと敗北感、娘の誇らしさと罪悪感が交錯するシーンを心待ちにしているくらいだ。

父が突きつけた「働く意義と誇り」

とはいえ、決して父を馬鹿にしているわけではない。ふがいない父でも、娘に「人としてのあり方」を説くまっとうさがあるからだ。第53話(11月29日放送)で、絵付けの師匠(イッセー尾形)を尊敬してやまない戸田に、北村が声を荒らげたシーンがある。「好きなことを仕事にできている人だけをすばらしいと絶賛するのは、人として間違っている」と諭すのだ。

汗水垂らしてあせもだらけで働いても、家族を十分に支えることができない北村の「働く意義と誇り」を突きつけられた。戸田も、私も、たぶん視聴者全員が。稼げなくても養えなくても、職に貴賎なし、人間はみな対等という当たり前の意識。その欠如を指摘されたようで、はっとしたのだ。