そういえば、大阪で1人頑張っている戸田に、母(富田靖子)が送ってくれた荷物を思い出した。そこに入っていたのは、なぜか父の汗を拭いた、くさい手ぬぐいだった。あのシーンがここにつながるわけだ。

金と酒にはだらしなくても、人として忘れてはならない感覚を教えてくれた父。ヒロインの成長に欠かせない「人の痛み」でもある。父と娘のつばぜり合いが朝ドラには必須だなぁと改めて思った。

すべての働く女に意地と誇りがある

スカーレットに出てくる女たちは、働く矜持がある。印象的なのは2人。まず、みんな大好き大久保さんこと、三林である。女中の仕事について「3枚の皿」でたとえた話は、ネットでも話題に。「ここに皿が3枚ある。1枚は家族のために磨いた皿、2枚目は仕事で磨いた皿、3枚目は家族や仕事関係なく、心を込めて磨いた皿。どの皿がキレイになるか?」という問いだった。戸田は「3枚目」と答える。

正解は「どれも同じ」。女中は誰でもできる仕事だと思われているから、周りの人から見たら一緒。どうやっても評価されない(から、若い娘には無理)というたとえだった。三林の話は主婦業が軽視されがちな現代にも通ずる奥深さがあった。諦めでもあり、意地と誇りでもあったのだ。

三林が仕込んだ地獄の家事特訓のおかげで、その後、戸田は評価されたり、結果的にプラスに働いた部分も描いている。荒木荘の住民・水野美紀が勤める新聞社で、気働きができる戸田は重宝されて、誘われたのだ。さらには、信楽に戻って丸熊陶業の社員食堂で働き始めたときも、戸田は「荒木荘の仕事に比べたらなんとラクなことか!」と感じる。女中業は実に汎用性が高く、スキルアップにもつながる仕事であったと証明した。