2人目は、新聞社という完全なる男社会で働く水野だ。夜討ち朝駆け当たり前、大手新聞社に同僚が引き抜かれた後の尻ぬぐいもこなし、心血注いで働いてきた。ところが新聞の売り上げは低迷、次々と記者は辞め、ついには尊敬する先輩(辻本茂雄)までもが去ってしまう。残った社員からは「女はどうせ腰掛け、結婚しろ」とまでののしられ、泣きながらさまよう水野。

独身女性への偏見と冷遇が横行する様子、プライドをもって働いてきた女が心折れる瞬間を目の当たりにした。フィールドは違えど、女中も新聞記者も評価されない女の悔しさは共通である。

不運と試練の連続だが、人のせいにしない

なんといっても戸田が気持ちいい。彼女に立ちはだかる壁のバリエーションは実にさまざまだ。体当たりと根性で壁をぶち破ることもあれば、壁の前に立ち止まって迂回することもあった。

それでも、つねに「自分が主語」で結論を出す。大阪で女中業に邁進するときも、美術学校を諦めて信楽に戻るときも、絵付けの弟子入りを決めたときも、不本意なマスコットガール・ミッコーをやらされたときも、賃金アップの要求をするときも、とにかく結論の主語はすべて「私」。人のせいにしないヒロインが気持ちいい。

しかも底抜けに明るい。とにかく明るい。荒木荘時代に失恋を経験した戸田には、ぜひまた恋をしてほしい。どうやら陶芸家の松下洸平とよき関係を築けそうな気配。まじめで、赤貧と人の痛みを知る松下となら、心のさらなる成長があるはずだ。

著者:吉田 潮