『人生にお金はいくら必要か〔増補改訂版〕』(山崎元、岩城みずほ著、東洋経済新報社)は、2017年に刊行された同名書籍の最新エディション。経済評論家の山崎元、ファイナンシャルプランナーの岩城みずほ両氏による共著である。

すべての人にとって必要なお金の知識は、他人の平均値にもとづく老後資金の目処ではなくて、自分の数字で必要額を計算する方法です。「やり方を教えること」こそが、唯一の有効な方法であり、同時に人として望ましい親切でもあります。ものの喩えとして、「魚をくれてやることよりも、魚の釣り方を教えることこそが、真の親切だ」とよく言われますが、お金の問題についても同様のことが言えます。(「まえがき」より)

根底にあるのは、このような考え方だ。

人生設計の基本公式とその使い方について解説した第1、2章には、将来の年金額の推計方法についての説明と情報、そして老後の資産の適正な取崩額を求める「老後設計の基本公式」も追加されている。

第3章で紹介されているのは、計画的な貯蓄によって貯まったお金を適切に運用する方法だ。根幹部分については前著の内容に変更はないものの、2018年に「つみたてNISA」という“利用しがいのある”新制度が登場したこと、その後の運用のコンサルティングなどで得た運用のコツなど、有用な知識が加筆されている。

老後に2000万円は必要?

ところで、2019年6月に発表された金融庁金融審議会の報告書のなかで、「老後に2000万円必要だ」という試算が取り上げられて大きな問題になったことは記憶に新しい。

モヤモヤとした思いをいまだに払拭しきれていない人も多いだろうが、このことに関連し、もうひとつのトピックがある。新たに序章が設けられ、この問題のなにが問題なのか、そしてそれを踏まえたうえで個人はどうすべきなのかがまとめられているのである。

ここでは、本書を理解するための重要なポイントでもあるそれらを確認してみよう。

① 「報告書」そのものはそれほど悪くなかった

注目すべきは、報告書をていねいに読めば、「2000万円」は単なる試算結果でしかなく、まして公的年金が破綻するなどとは書かれていないことがわかるという指摘だ。

そこには、老後に備え計画的に資産を形成し、管理することが大事だという常識的な内容が書かれていたにすぎないというのである。

では、なぜこの問題が「炎上」したのか? その原因はほぼ100%、麻生太郎財務大臣の対応の拙さにあったという。ていねいに説明すれば特に問題のない報告書を、「表現が不適切だった」と切り捨てたことこそが不適切だったというのだ。

また、どこがどう問題なのかを説明しなかったため、報告書全体が不適切であるかのように受け取られてしまったことも混乱に拍車をかけた。