韓国映画『パラサイト 半地下の家族』が作品賞を含む4部門で受賞した2020年、アメリカのアカデミー賞は広い世界に向けて門戸を開く、時代に合った姿勢を示した。そのすてきなサプライズの陰にすっかり隠れてしまったが、今年はジョーカーを演じたホアキン・フェニックスが、アメコミ映画では史上初の主演男優賞を受賞するという画期的な出来事も起きている。

フェニックスは、アカデミー賞に至るまでのありとあらゆる賞を総なめにしてきたことから、受賞に対する驚きはまるで聞かれなかった。過去には『ダークナイト』で同じ役を演じたヒース・レジャーが助演男優賞を受賞しているし、そこまですごいことだと思わない人も多いだろう。だが、レジャーの受賞は28歳の若さで急死した彼への追悼の意味も含めての特例のようなものだった。

アメコミ映画というだけで受賞は不利

20キロ以上減量し、あの不気味な笑いで人々の心を揺さぶったフェニックスの演技は、もちろん受賞に値する。が、さらにフェニックスは環境にも恵まれていた。

基本的にアカデミーは実在の人物を演じた俳優を評価する傾向にあるが、今年、主演男優賞部門でそれに該当したのは、『2人のローマ教皇』のジョナサン・プライスのみ。しかも彼は『フォードvsフェラーリ』のクリスチャン・ベールの枠を奪って入り込んだような位置づけで、受賞する見込みは薄かった。

そのほかの候補者で、とくに推す声が聞かれたのは、『ペイン・アンド・グローリー』のアントニオ・バンデラスだ。細やかなニュアンスに満ちた彼の演技を絶賛する人たちは、フェニックスによるジョーカーを「わかりやすいものが受賞するのだ」と皮肉ったりもしていた。