今年1月、都内、JR東中野駅そばのポレポレ東中野は連日立ち見客でわいていた。

座席数102のミニシアターで上映されていたのは『さよならテレビ』。前作『ヤクザと憲法』(2016年公開、以下同)で話題を呼んだ圡方宏史監督、阿武野勝彦プロデューサーによる「東海テレビドキュメンタリー劇場」の13作目にあたる。

これまでドキュメンタリー映画は当たらないといわれてきたが、東海テレビ作品でも最大のヒット作となった『人生フルーツ』(伏原健之監督、2016年)のほかにも、『FAKE』(森達也監督、2016年)や、『主戦場』(ミキ・デザキ監督、2019年)といった映画界に議論を巻き起こすような作品を配給してきたのが、東京都新宿区にある映画配給会社「東風」(社員5人)だ。

今、『さよならテレビ』が1月2日の封切りから2カ月で動員数は約2万人を超え、ミニシアター系のドキュメンタリーとしては異例の大ヒットになっている。

そんな話題のドキュメンタリー作品を多く配給する、東風の木下繁貴代表に話を聞いた。

ポレポレ東中野に育ててもらった

──『さよならテレビ』のSNSでの反響がすごかった。とくに初日からの数日間は、行列ができるラーメン屋さんのようで。行っても入れないという口コミがあふれていました。大きな劇場だと、こうした動きは起きなかったかもしれない。まず、劇場選びはどうされたのでしょうか。

東海テレビの作品に関していうと、ほとんどがポレポレ東中野です。1本目の作品を公開したときに劇場さんからも「入らなくても少なくとも3本まではやろうね」と言ってもらったこともあります。「これは入りそうな作品だから大きな劇場にもって行こう」という考え方もありますが、観客が入らない作品もちゃんと上映してもらっているので、この作品できっちり映画館を支えていきたいというのは東海テレビにもうちにもあります。

──それは仁義みたいなものなのでしょうか。

まあ、そうですね。劇映画の場合、「製作費がこれだけかかっているから、費用を回収するためにどれぐらいの館数でやらないといけない」と計算をするわけですが、ドキュメンタリーの場合は制作費が少ないので、そういうことがない。あと、うちには会社を大きくしたいというのがない(笑)。

会社を少しでも長く存続させて、できるだけ多くの映画を上映する。それが社会にとっても豊かなことになると思っているので、持続させることが第一だと思ってやっています。